European Conference on Applied Superconductivity (EUCAS) は2年に1度ヨーロッパで開催される応用超伝導に関する国際会議である。今年で14回目のEUCASは、スコットランド南西部に位置するグラスゴー(Glasgow)で9月1日(日)~9月5日(木)に開催された。グラスゴーはスコットランド最大の都市で、貿易港、産業都市として発展した一方で、文化、芸術の街としても知られている。グラスゴー・セントラル駅から地下鉄で約4分のScottish Event Campus (SEC) が本会議の会場であった。
EUCASは、応用超伝導分野で活躍する科学者、技術者のための世界的な会議として、応用超伝導の知識及び最新の進歩を共有することを目的として行われている。本会議では、マテリアル、大規模応用、エレクトロニクスの3分野のセッションが催行された。今年の会議参加者は1,010人(学生243人)で、国別参加者は、37か国中、日本が最多154人で、イギリス146人、中国125人の順であった。
次回のEUCASはロシア・モスクワで2021年9月に開催予定である。
会場の様子
本会議では、“Simulation of mechanical stress in REBaCuO ring bulk magnetized by pulsed-field”という題目でポスター発表を行った。
発表の様子
バルク超電導体は磁場を捕捉することで永久磁石より強力な磁場発生源として利用できる。着磁法の一つであるパルス着磁法 (PFM) は簡便な手法として有効であり、応用が期待されている。着磁の際、バルク内に発生する電磁力はバルクの破壊を引き起こすことからバルク超電導体の応力挙動が注目されている。
本研究ではシミュレーション解析を用いて、リング型の超電導バルクに対しPFM中の電磁応力および、様々な形状の金属容器による補強効果を算出した。さらに、磁場、熱、応力挙動の観点から、PFMの応用に向けたリングバルクの最適な補強構造の提案を行った。
バルク超電導体の本格的な応用において、バルクの破壊現象に対処する手法は重要とされ、2時間の発表時間の中で、解析結果や解析手法に関する建設的な意見、実験的な視点からの助言などをいただいた。今後の研究に有用な知見を獲得できたことから、有意義な発表となった。
本会議の参加による国内外の研究者たちとの様々な意見交流は、私にとって大変貴重な経験となった。
発表に関して、これまでの研究成果を可能な限り伝えることができたと感じる一方で、議論を深めるにあたり英語力が課題となった。今後、研究成果を十分に伝えられるように、継続した英語力の向上に努めたいと思う。また聴講に関して、同分野の発表は自らの研究活動への刺激となり、異分野の発表は日々の研究活動では得られない新しい知見となった。
加えて、昨年、インターンシップでお世話になった研究者たちに再会し、近況報告や今後の研究活動についての話ができ、充実した時間を過ごした。
最後に本会議への参加にあたり、多大なるご支援をしていただいた一般財団法人丸文財団に、この場を借りて心より感謝申し上げます。