会議となったSan Jose McEnery Convention Centerの外観
Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO)はフォトニクス分野で最も大きな国際会議の一つである。CLEOは “Applications & Technology”、“Fundamental Science”、“Science & Innovations” の3つのカテゴリーを有し、基礎から応用に至るまで幅広い研究に関する発表が行われる。そのため、50以上の国から、4,400人以上の参加者が例年CLEOに集う。Plenary Sessionでは、各分野で多大な貢献をした研究者によるTalkがあり、大きなホール一つが聴衆で埋められるほどの人気を博す。加えて、スポンサー企業の出展ブース(CLEO:EXPO)も規模が大きく、光学機器をはじめとした実験機器に関するデモや、展示を見ることも可能である。したがって、大学の研究機関に所属する研究者のみならず、企業からの参加者も一体となった国際会議である。
“Population relaxation and coherence times of 167Er3+ diluted to 10 ppm in Y2SiO5 at zero magnetic field”というタイトルでポスター発表を行った。本研究は、既存の通信方法とは異なる量子通信を実現にあたり、鍵となる量子メモリの候補のひとつである167Er3+の電子分布寿命とコヒーレンス時間を測定したという内容である。希土類イオンは4f軌道内電子遷移を可能とし、これにより長い分布寿命とコヒーレンス時間をもつ。電子分布寿命とは、電子がその準位からエネルギーを失って他の準位へ遷移するまでの時間であり、電子が離散的なエネルギー準位に対してどのように分布し時間発展していくかを知るために必要なパラメータである。コヒーレンス時間とは、電子が多準位に対して重ね合わせの状態にあるとき、それが保たれる時間のことである。量子メモリは量子状態の保存を目的としており、コヒーレンス時間はメモリ時間に大きな関係がある。167Er3+は、通信波長帯に光学遷移波長を持つことから、長いコヒーレンス時間と通信波長帯光子の保存が可能なイオンとして注目されてきた。しかし、これら電子分布寿命およびコヒーレンス時間はこれまで見積もられておらず、167Er3+が量子メモリに応用可能かという点は明らかにされていなかった。当日は、これらの見積もりを行い量子メモリに応用可能かという観点から検討を行い、種々の結果について議論した。
今回が初となる海外での国際会議であったため、各分野を最先端で牽引する研究者の方々と英語で議論を交わせるか多少不安があった。しかし、そのような不安は発表が始まるとすぐに消え、ポスターに訪れた方々と英語で議論を交わすことができた。この経験は、英語でのコミュニケーションについて自信を持つことができる貴重なもので、国際会議での大きな成果のひとつと言える。また、そこでの議論は今後の研究に役立つものが多く、参考になった。
海外の学生とも交流することができた。各国を代表する大学で学ぶ学生とお互いの研究内容をもとに議論を交わすことができたのは、国際交流という点において大きな成果と言える。お互い、将来は研究者としてCLEOに参加することを誓い、このことは自分にとって今後の研究に活力を与えるものである。
最後に、本国際会議への参加にあたり、惜しみない支援をしていただいた一般財団法人丸文財団に心より感謝いたします。