国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

令和元年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
林 兼輔
(岐阜大学 大学院工学研究科 電子情報システム工学専攻)
会議名
2019 MRS Fall Meeting & Exhibit
期日
2019年12月1日~6日
開催地
Hynes Convention Center, Boston, Massachusetts, United States of America

1. 国際会議の概要

MRS (Material Research Society) は1973年にアメリカ合衆国で創設された、材料科学をより発展させるための組織で、約14,000人の会員が世界90カ国以上の地域にいます。MRSが研究対象にしているのは材料科学全域で、物理的、化学的、生理学的に材料を捉え、材料の合成、加工の工学的観点も絡めて学際的に材料科学を扱っています。

そのMRSが主催する学術講演会が春季大会と秋季大会として年に2度行われます。春季大会はアリゾナ州のフェニックスで行われ、秋季大会はマサチューセッツ州のボストンで行われ、各大会に5-6,000人が参加します。

大会では世界中から各分野の第一人者を招き、その分野の最先端の研究の紹介と議論が行われる口頭発表の部門と、主に学生、ポスドクなどの若手の研究者が発表するポスター部門があり、大会期間が1週間もある大型の大会です。

2. 研究テーマと討論内容

私は、「Electronic, Photonic and Magnetic Materials」という大枠の中の「Multiferroics and Magnetoelectrics」というセッションにて、「Magnetic Properties of Co3-XNiXO4 (0 ≤ X ≤ 1.28) Particles Synthesized from Co1-YNiY(OH)2 Precursors」というタイトルでポスター発表を行いました。

具体的な内容を簡潔にまとめると、今まで作製が困難であったCo3-XNiXO4という物質を今までにない新しいアプローチを用いることで作製し、その材料特性を明らかにしたという内容です。

私の実験は主に無機化学合成に重きを置いている実験で、同じ無機化学を専門にしている方からは、他のアプローチとの具体的な違いや合成した材料の質の議論など、自身が特に力を入れていた部分を深く議論することができました。また、材料特性の評価を専門にしている方からは、新たな評価方法の提案や、得られた材料特性の解釈の仕方など、新しい視点からの意見を多くいただき、非常に実りの多い討論が行えました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

私は、この2019 MRS Fall Meetingに、私自身研究を発表することの他に、ある大きな目的をもって参加をしました。その目的とは、私は卒業後にアメリカ合衆国でポスドクを行いたいと考えており、その受け入れ先を探すことです。そのため、口頭発表のコーヒーブレイクの間に積極的に大学の先生方に話しかけて、自身がポスドクの受け入れ先を探していることを伝えました。その際の相手側の反応は想像以上に好意的で、話しかけたほぼすべての人物が「welcome」と言ってくれました。現在、会場でお会いしたMITの先生と連絡を取っており、来年度からのポスドクの話を進めているところです。

また、いろいろ話を聞いてみると、アメリカ合衆国では資金が潤沢にあっても、Ph.Dを持っている人間はみな、企業の方に流れてしまい、なかなかポスドクになってくれる人物がいないと言っていました。日本ではポスドクを雇いたくても資金的な都合で雇うことができない研究施設が多い中、逆の現象が起こっていることに非常に驚きました。

このように、国際学会の場は単なる国際交流の場だけではなく、強い意志と目的を持って参加すれば、自分の人生を大きく変える就職活動の場にもなります。海外でポスドクをするのに必要なのは、コネや実力ではなく現地に赴き自分の意志を伝えることだとよく分かりました。私のこの文章がどこまで行き渡るかはわかりませんが、この文章で私の後輩となる博士の学生を一人でも感化できたら幸いです。

最後に、私自身の人生を大きく変える機会を与えてくれた一般財団法人丸文財団に心よりの感謝と、これからも博士学生の将来を大きく広げるこの活動の継続と拡大をお願いして、文章を締めさせていただきます。

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