International Conference on Analog VLSI Circuits (AVIC) は、電気学会 (IEEJ) が主体となり、開催地に所在する大学、IEEE CAS Japan Joint Chapterおよび電子部品関連企業等の協賛の元で実施されるアナログ集積回路の国際会議である。
今年のAVICは、台湾の宜蘭県にあるエバーグリーンリゾートホテルにて実施された。
本国際会議では、アナログ集積回路やRF回路はもちろんのこと、アナログとデジタルの双方に関係するAD/DA変換器、生体信号処理等の特定のアプリケーションに特化したアンプ等の議論等がなされた。参加者は約100名であり、発表件数は45件(全てオーラル発表)であった。
今年のAVICでは特に生体信号処理用回路に関する発表件数が多く、身体にインプラントする(埋め込む)ことを想定した省電力なセンサや、電源ノイズを除去するノッチフィルタ等について活発な議論が行われた。
次回の開催は2020年10月であり、開催地はフランスのボルドーを予定している。
Fig. 1宜蘭伝芸中心(国立伝統芸術センター)
Fig. 2 エバーグリーンリゾートホテル(AVIC 2019会場)
本国際会議の「アナログ技術」セッションにおいて「A Very Low Frequency Lowpass Filter with Finite Transmission Zeros Realized by Using Network Impedance Scalers」というタイトルでオーラル発表を行った。
Fig. 3 発表の様子
本研究では100 Hz程度の生体信号処理に用いられる超低周波フィルタを構成する回路ブロックである Impedance Scaling Circuit (ISC) を一般化した Network Impedance Scaler (NIS) を提案した。提案したNISは、既存のISCをその応用として含み、NISを超低周波フィルタに応用することで、既存の回路よりも常に少ない増幅回路でフィルタが実現できることを示した。理論の妥当性を確認するため3次の超低周波フィルタを構成し、計算機シミュレーションを行うことで、提案回路が従来回路よりも省電力であり、かつ良好な周波数特性を有することを示した。
討論では、1/fノイズ特性や素子感度(素子値がばらついた場合の特性劣化)に関する質問や、今後新たに分析していくことが望ましい事項に関して提案をいただき、研究を進めていく上で重要な示唆を得ることができたといえる。
招待講演においては、無線給電の特長や技術的課題に加え、テスラコイルに始まる無線給電の歴史について学ぶことができた。講演を通じ、無線給電には近距離と遠距離でそれぞれ特性が異なり、特に遠距離無線給電はEVへの給電のほか、家庭内の家電製品を無線給電できる可能性があることを学んだ。また、家庭内の無線給電は、距離に伴い電力効率が低下するだけでなく、壁に電磁波が反射することで、設置場所によって給電効率がばらつくこと、これを克服するために給電端末を増やす試みが行われていることを学んだ。
国際交流としては、国立交通大学(台湾)の教員および学生との交流を通じ、日本と台湾の大学教育、研究および就職活動のスケジュールに関する相違点について知ることができた。特に、台湾においては、(工学分野では)企業とのプロジェクトの進捗によって就職活動の日程を調整することが珍しくないということを聞いて、日本との違いを感じた。また、他大学の教員から、近年のAD変換器の研究動向についてお話をうかがい、AD変換器の性能がハイゼンベルグの不確定性原理に基づく理論値に近づいていることを学んだ。
最後に、貴財団からの支援のおかげで、本国際会議 AVIC 2019 に参加・発表し有益な議論を交わすことができました。心より感謝申し上げます。