Asian Conference on Coordination Chemistry (ACCC) は、世界中から無機化学と配位化学の研究者が参加して最新の研究成果を発表し、新たなシーズを模索するとともに、研究者間のネットワークを拡げることを目的としている。ACCCは2007年に岡崎市で第1回目が開催されて以来、アジアを中心に隔年で開催され、アジア太平洋地域における無機化学と配位化学の発展を図るという役割も担っている。
会場内の様子
第7回ACCCは、マレーシアのクアラルンプール市にあるプトラ世界貿易センターを会場に、10月15日から18日までの4日間にわたって開催された。多くの研究者が参加しており、生物有機化学、触媒化学、超分子化学など15分野に分かれて、約150件の口頭発表と約100件のポスター発表が行われ、活気にあふれていた。
なお、次の第8回ACCCは2021年に台湾で開催される予定である。
ポスター発表にて
報告者は、Coordination Chemistryの分野で、“ Control of Self-Assembly of Flexible Polyimine Ligands by Stepwise Metal Coordination ”(段階的な配位結合形成による柔軟なポリイミン配位子の自己組織化制御)と題してポスター発表を行った。発表内容は次の通りである。
有機配位子と金属イオンを用いた自己組織化では、通常の有機合成ではつくることができない複雑な構造や、巨大な構造をつくることができる。一般には、金属イオンの配位形式に上手く組み合わさるように設計された剛直な配位子を用いて一義的な構造に自己集合させる場合が多い。一方で、複数の等価な配位点を持つ柔軟な配位子を用いた場合では、金属イオンとの錯形成において非常に多くの準安定な構造が生じてしまう。そこで、本研究では、イソピラゾール環上の二つの等価なイミン性窒素原子が金属イオンの当量によって段階的に二つの配位結合を作り出すという仕組みを利用することで、柔軟なポリイミン配位子の自己組織化制御を行った。
討論では、上記の発表内容について、剛直なピリジン配位子を用いた場合との相違点や配位形式などに関する質問があり、議論を行った。
クアラルンプール市内の夜景
第7回ACCCへの参加により、言語の壁や分野の違いを超えて研究成果を伝えるという貴重な経験ができた。報告者にとっては初めての国際会議への参加で不安もあったが、発表と質疑応答を幾度も繰り返し練習したところ、海外の研究者とも活発に意見交換ができた。その一方で、ボキャブラリー不足を思い知らされ、英語能力向上の必要性を痛感した。
バンケットやイクスカージョンでは、多くの参加者と交流でき、研究活動の他にそれぞれの国の文化や習慣などについて興味深い話を聞くことができた。
以上のように、報告者は第7回ACCCへの参加から多くのことを学び、とても有意義な経験となった。
最後に、第7回ACCCへ参加する機会を与えていただいた貴財団に心よりお礼申し上げる次第である。