図1 Xi'an の街並み
29th International Photovoltaic Science and Engineering Conference (PVSEC-29) は毎年秋に開催される太陽電池の専門的な国際会議である。本会議は、2018年現在で世界シェアが約60%を占める太陽電池大国中国での開催であった。また世界第2位のマーケットシェアを誇るLONGiがスポンサーとして参加・研究成果発表をしており、本会議における研究成果の発表は非常にインパクトのあるものであった。本会議は延べ5日間で1,000人以上の専門家が集まり、14のセッションに分かれての発表と活発な議論が行われた。私はAdvanced concepts and new emerging materials for future PVでのセッションでの発表を行い、この分野では新コンセプトの太陽電池や新規素材を用いた超高効率・低コスト太陽電池応用に関する議論が行われた。
私は “Characterization of Silicon Quantum Dot Solar Cell with the Phosphorus Blocking Layer” の題目で、シリコン量子ドットを用いた太陽電池に関する研究成果をポスター発表した。シリコン量子ドットは量子サイズ効果によるバンドギャップ変化を利用し、変換効率が40%以上を達成できるといわれるタンデム型太陽電池のトップセルとしての利用が検討されている。またシリコンは無毒で資源が豊富であり、かつ現在のシリコン産業に容易に応用が可能なため、この点においても非常に魅力的な応用である。作製方法としては高品質かつ大面積成膜が可能な化学気相成長法(PECVD)を用いている。我々は近年報告されたシリコン量子ドット太陽電池に関する問題点を挙げ、これらを解決するシリコン量子ドット太陽電池構造を提案した。しかしながら本構造ではドーピング元素のリンの拡散が問題となりうる。本研究では障壁層としてニオブ添加酸化チタン(TiO2:Nb)挿入してのリン拡散抑制を狙った。本発表ではTiO2:Nbの厚さに対するリンの拡散依存性と、最適化したTiO2:Nbを用いた太陽電池特性の評価を行った。我々の調査の結果、厚さ10nmのTiO2:NbがP拡散の抑制に有効だと分かった。また、これを利用した太陽電池の特性として短絡電流密度が1.8 mA/cm2を達成することに成功した。この値は先行研究として挙げられた報告の約100倍にあたり、超高効率太陽電池の実現に向けて大きく前進する結果となった。
図2 発表の様子
今回は3回目の英語でのポスター発表であったため、普段と変わりなく発表することができた。また、入り口に非常に近い位置での掲示であったため、非常に多くの参加者の目に我々の研究成果を発表することができ、非常に嬉しく感じた。また、あらかじめ持ち込んだ補足資料を用いて、聞き手によりわかりやすく説明することができ、聞きに来た方々の興味関心をより引くことができたかと感じた。我々の研究に対する企業側からのアドバイスもあり、これらを参考にして更なる研究を進めたいと考えている。発表時以外では、他の発表を聞くことで、現在の市場動向や今後の発電効率向上に関する方針を伺い知ることができた。今回の国際学会を通して、発表スキルはもちろんのこと、太陽電池に関する最新の話を聞くことができ、一研究者として大変有意義な時間を過ごすことができた。
本会議に参加するにあたり、御支援いただきました貴財団に厚く御礼申し上げます。