EUROSENSORSはセンサ材料・センサ素子・センサシステムに関する分野の国際会議であり、この分野における欧州最大規模の国際会議である。開催国は毎年異なり、今回は研究費の比率が国内総生産の3%以上とEU平均に対して極めて高いといった理由などからオーストリア第二の都市・グラーツで開催された。講演採択率はおよそ75%で、135の口頭発表、302のポスター発表が行われ、そのうちの15講演(約3%)は日本人によって行われた。我々の研究対象である光学式化学センサに関する発表も数多くあり、いずれも非常に興味深いものであった。
今回の会議はグラーツにあるグラーツ大学において9月9日から9月12日までの計4日間開催された。
グラーツ大学
グラーツの町並み
我々はマイクロリング共振器という光導波路を用いた水素センサを開発している。マイクロリング共振器は直線状とリング状の2種の導波路からなる。直線導波路部に入射されたブロードバンド光のうち特定の波長成分の光をリング導波路部にカップリングさせることで、透過光スペクトルに谷の部分(振波長という)を生じさせるデバイスである。これに水素感応物質である白金担持酸化タングステンを組み合わせ、水素濃度を共振波長のシフト量より計測するデバイスの作製に取り組んでいる。
“Response Characteristics of Silicon Microring Resonator Sensor”と題してポスター発表を行った。ポスター発表は9月10日の16時30分から18時30分まで行われ、飲食物を片手に様々な議論が交わされた。主にセンサの動作原理や、マイクロリング共振器の持つ優位性について議論した。
カンファレンスディナーの様子
人生初の欧米圏ということで、グラーツに到着して間もない頃は困った時に近くにいる誰かに尋ねることすら二の足を踏んでしまう状態だった。国際会議中、一人で行動していた私に話しかけてくれる欧米人が何名かおり、会話を交わす中で欧米人の表情を読み取れようになり、話しかけることへの恐怖心は自然と薄れていった。以降は自分からコミュニケーションを取れるようになり、非常に濃い英語を使う経験を積めたと感じている。
コミュニケーションをとる上で、自国に対する理解を深めることの重要さを再認識した。日本で起きた最近の出来事に対する理解である。思いの外、学会直前に起こった北海道の地震、関西地方の豪雨について尋ねられた。
学会に参加されていた、現在ドイツの大学の研究室で活動されているという日本人の方にお誘いいただき、学会の締めくくりとなるカンファレンスディナーではドイツの大学の方々と同席して食事をいただいた。日本とドイツの大学院の仕組みや就職活動の違いについて話をして交流を深めることができた。
国籍を問わず数多くの方々に助けていただけたために、国際学会で有意義な経験ができた。
最後に、本学会への参加にあたり、貴財団より多大なるご支援を賜りましたことを心より御礼申し上げます。