Fig.1 マーライオン
The International Symposium on Information Theory and Its Applications (ISITA) は1990年に発足し、2年に一度開催される情報科学分野としては長い歴史を有する国際会議である。本国際会議は多分野にまたがる交流を促すフォーラムとして、情報理論分野における関心の高いテーマについて、主な研究者を集め活発な議論が行われる絶好な機会を提供するものである。
今回の2018 International Symposium on Information Theory and Its Applications (ISITA2018) は2018年10月28日から31日まで、シンガポールのGrand Copthorne Waterfrontで開催された。次回のISITAは2020年10月24日から27日まで、ハワイ州(アメリカ)のKapoleiで開催される予定である。
本国際会議のQuantum Informationセッションにて、「Error performance and robustness of optimum quantum detection for MPSK signals in the presence of phase noise」というタイトルでオーラル発表を行った。
Fig.2 発表の様子
光を用いた量子通信を行う場合、量子効果によって生ずる量子雑音が原理的に不可避であり、純粋減衰や熱雑音環境下などの基本的な場合について、信号の検出感度の原理的限界などが考察されている。しかしながら、無線量子通信の実現に向け、より多様で現実的な場合について量子通信の特性や実装方法を明らかにする必要がある。
本研究では、研究が不足している位相雑音に注目し、それが単独で生じる量子通信路において、M元PSK信号に対し誤り率特性を示した。さらに、量子最適受信機が位相雑音量の変化に追随できない場合を想定し、真の位相雑音量と受信機が予測した位相雑音量が異なる場合を考えることで、量子最適受信機のロバスト性を明らかにするとともに、よりロバストな受信機設計の方針を示唆した。量子通信システムの実装は、光量子エレクトロニクス技術を用いて行われるため、本研究結果は、同技術を量子最適受信機実現のためにどのように応用するかを示すものとなる。
Fig.3 爽やかな夜景
量子通信の研究は、理論の段階から、現実的な問題に直面する段階に移りつつある。特に融合分野として、物理や数学、情報などの知識を取り入れるだけではなく、さらに他分野の知恵も積極的に吸収する必要がある。本国際会議では、興味深い研究発表が数多くあり、一見して私の研究とはほぼ関係ない課題でも、濃密なディスカッションを行うことにより、私の今後の課題を啓発できた場合もあった。本国際会議に参加した経験を活かし、課題を一層深く研鑽してさらに発展させるのが楽しみである。
最後に、本国際会議への参加にあたり、貴財団より多大なるご支援を賜り、心より感謝申し上げます。