本会議はThe American Ceramic SocietyのEngineering Ceramics Divisionの主催で1977年から毎年開催されている、エンジニアリングセラミックスに関する世界一規模の大きく権威ある会議である。今回は42カ国から1,000人以上が参加し、大西洋に面した会場で一週間にわたり活発な議論が交わされた。研究発表の内容は、近年注目が集まっているセラミックス基複合材料のシンポジウムに加えて、バイオセラミックスや多孔質セラミックスなどのエンジニアリングセラミックスに関するシンポジウム、および画像解析などの評価に関するシンポジウムなどが企画された。研究発表と合わせて、セラミックス関連企業による展示およびイベントも行われており、日本以上に産学が活発に連携し、本会議は企画されている。また、会議前日にはKennedy Space Centerへのツアーも企画されている。
次回は2020年1月26-31日に同会場で開催される予定である。
会場からの風景
Kennedy Space Center
半導体製造工程では製造装置内部の部材がプラズマによる腐食によって発生するとされるパーティクルの影響を抑えるために、耐プラズマ性に優れた材料が求められている。 これまでに発表者らは、優れた耐プラズマ性が期待されているY-O-F系セラミックスを作製し、低エネルギーのフッ素系プラズマ環境下での耐食性を評価し、良好な耐食性を確認している。 本研究では、実際の半導体製造で用いられる高エネルギーのフッ素系プラズマ環境下でのY-O-F系セラミックスの腐食挙動を評価した。
Y-O-Fセラミックスは、イットリアと同等のエッチングレートを示し、高いエッチング耐性を示した。また、フッ素濃度の高いY-O-Fセラミックスは、イットリアやフッ素濃度の低いY-O-Fセラミックスと比較して表面粗さの変化が軽微であり、より高いプラズマ耐性を示した。フッ素系プラズマ照射後の断面を透過型電子顕微鏡により観察した結果、イットリアおよびフッ素濃度の低いY-O-Fセラミックスではプラズマによる物理的なダメージに起因する変質層が観察されたのに対して、フッ素濃度の高いY-O-Fセラミックスでは変質層が観察されなかった。以上の結果から、Y-O-Fセラミックスのプラズマ耐性はフッ素濃度に依存し、フッ素濃度の高いY-O-Fセラミックスは半導体製造装置部材用の耐食材料として有望である。
一方で、本学会ではフッ素濃度の高いY-O-Fセラミックスの組成安定性についてコメントをいただいたことから、今後はY-O-Fセラミックスの安定性について調査するとともに、フッ素以外のプラズマに対する耐性の評価を進める予定である。
本会議で発表することで、エンジニアリングセラミックスに関する幅広い立場からコメントをいただくことができ、今後の研究遂行に極めて有意義であった。プラズマ耐食材料に関する発表は半導体プロセスに関する学会およびセラミックスに関する学会のどちらでも極めて限られており、多くの研究者と交流することが研究の推進に極めて重要であると痛感した。また、こちらの研究に対するコメントだけでなく、交流した研究者の研究に関するアドバイスを求められることもあり、本研究の重要性がより理解できたとともに、産業界の取り組んでいる技術的課題について理解を深めた。
本国際会議へ参加するにあたり「国際交流助成金」を交付くださいました丸文財団に深く感謝いたします。