国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成30年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
武内 裕香
(室蘭工業大学)
会議名
2019 Joint MMM-Intermag Conference
期日
2019年1月14日~18日
開催地
Washington D.C.

1. 国際会議の概要

2019 Joint MMM-intermag はAIPとIEEEの主催により3年に一度開催され、今年はアメリカのワシントンD.C.で1月14日から18日までの5日間にわたり行われた。この会議は物性から磁気センサ等のデバイス技術、生体磁気など磁気に関する幅広いセッションから構成される。

ワシントンD.C.での開催は2010年以来の9年ぶりであった。会議の前日には雪が降り、吹雪に近い状態であったが、その後は天候に恵まれた。本会議は世界各国の研究者が参加し、口頭とポスター発表を合わせて約1,500件の発表が行われた。参加者の割合は日本人が多いように感じられ、この分野において日本の貢献度が高いことが窺えた。

次回の会議は3年後の2022年1月にアメリカのニューオリンズで開催されることがアナウンスされた。

2. 研究テーマと討論内容

今回、「The behavior of monosodium urate crystals as highly viscous suspension modeled synovial fluid」のタイトルで発表を行った。現在、痛風診断において尿酸ナトリウム結晶の磁気特性を利用して、磁気と光により、結晶の存在を簡便に確認する新規検出法を提案している。ここで、問題となるのが、尿酸ナトリウム結晶は実際には関節液中に存在していることである。関節液はヒアルロン酸とタンパク質で構成されており水に比べ非常に粘性が高い。そのため高粘度の液中に分散する結晶が速やかに磁場応答しなければ、迅速な診断に結びつかない。本発表では、関節腔モデルを構築し、高粘性下において、磁場を印加した際の結晶の挙動を明らかにした。具体的には約1,250 cPの粘性溶液中に存在する尿酸ナトリウム結晶に磁場500ミリテスラを印加した際の透過光強度を測定した結果、透過光強度は増加し、磁場をOFFにすると、透過光強度が減少する様子が確認され、この現象は100ミリテスラまで測定が可能であった。本発表では1,250 cP(温度22℃)の粘性下において結晶の回転が確認されたことから、生体内に存在する結晶に対しても、同手法を用いた即時診断が実施可能であることが示唆された。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

昨年のアメリカ東海岸は「大寒波」で世界的なニュースになっていたと記憶していたので、厚着をしてワシントンD.C.へと向かった。おそらく昨年程ではないが、北海道から来た私にとっても寒かった。そんな中、近未来的で非常に美しいワシントンD.C.の地下鉄に乗って会場へと向かった。

ポスターでの発表であったが、思っていたよりも多くの人に目に留めていただき、デバイスとして応用するための具体的なアイデアについてもディスカッションすることができた。今後、痛風の患部を模した人工関節モデルを作成して、実際の関節環境における配向挙動を調べる予定であるが、今回発表した高粘度の懸濁液を模擬関節液として使用することに、肯定的な意見を多くいただけたので、今後の研究の方向性を確認する意味でも非常に有意義な会となった。

最後に、今回このような貴重な機会にご支援をいただいた丸文財団に深く感謝したい。

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