MOF 2018は有機金属錯体 (Metal Organic Frameworks; MOF) に焦点を当てた権威ある国際学会である。2年に1度開催される国際学会であり、今回が6回目となる。有機金属錯体は、材料という切り口で見ると、無機材料、有機材料、高分子材料のそれぞれの要素を持つ材料であるため、無機材料、有機材料、高分子材料にバックグラウンドを持つ研究者が集う学会ある。また、アプリケーションに焦点を当てると、触媒、吸着剤、分離膜、発光材料としての機能も持つため、それぞれの機能に精通している研究者も集う学会でもある。このように、有機金属錯体といっても、多岐にわたるため、大勢の人がこのMOF 2018に参加した。Plenaryの講演ではRichard Robson, Seth Cohen, Mohamed Eddaoudi, Pingyun Feng, Donglin Jiang, Berend Smithと著名な研究者による6件の発表があった。また、34件のKeynoteの発表があった。その他の口頭発表は、6会場で同時に3日半行われた。更に、夕方には連日ポスター発表も行われていた。上述のように、多岐にわたるバックグラウンドを持つ研究者が集まっているため、それぞれの立場から活発な質疑応答があり、白熱した議論が多く見受けられた。
<発表タイトル>
Anchoring 2-methylimidazole to Co on an ion exchange resin and its transformation to Co/N-C as an excellent catalyst for ORR
<討論内容>
近年、有機金属錯体を窒素などの不活性ガス雰囲気下での焼成により得られる金属担持カーボンが機能性材料として注目されている。特に、原子レベルでカーボンの分散した金属種が特異な機能を示すことが知られている。しかしながら、有機金属錯体は金属原子の密度が高いため、高温の焼成の際に金属原子が凝集してしまい、その結果、原子レベルの金属種を効果的に合成できないという問題がある。そこで、本研究では、有機金属錯体のユニットを高分散にイオン交換樹脂に固定化し、それを焼成することで金属種が高分散したカーボン材料の開発に成功したものであった。
画期的な触媒調製ということで、触媒に精通する研究者から高い評価を受けた。また、イオン交換樹脂は高分子材料であるので、高分子材料をバックグラウンドに持つ研究者からの興味も引いた。質問として多かった内容としては、他の文献の触媒との比較、他の金属への適用性、イオン交換基による影響などであった。
国際学会には何度か参加したことがあったが、今までは研究室のメンバーと一緒に参加することが多く、日本人の知り合いの研究者も多く参加する学会であることも多かった。そのため、研究室のメンバーや知り合いの日本人の研究者とほとんどの時間を過ごしていた。しかし、今回は研究室からは自身一人だけであり、少し異なる分野の学会ということもあり、知り合いの日本人の研究者が少ない学会であった。そういった環境であったため、今までの学会に比べて自発的に行動した学会であったといえる。具体的には、初対面の研究者のポスター発表を聞き行くこと、バンケットで初対面の人と英語で会話をしながら会食したことなどが挙げられる。今までの自分であれば、ここまで初対面の研究者とコミュニケーションをとることはなかったので、これが成果の一つである。
また、他の分野の研究者がたくさん参加した学会であり、自身の分野では当たり前の知識が通用しなかったりしたことが多々あった。しかし、時間を追うにつれて、他の分野の研究者にも伝わるように英語で表現できるようになってきた。この時、英語でのプレゼンテーションスキルが向上したことを実感した。このことも大きな収穫であった。