国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成30年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
工藤 弘子
(慶應義塾大学 大学院理工学研究科 総合デザイン工学専攻)
会議名
The 14th International Conference on Flow Analysis 及び
International Student Symposium in Analytical Science and Physical Chemistry
期日
2018年12月1日~7日
開催地
Arnoma Grand Bangkok, Thailand

1. 国際会議の概要

本学会は、流体を基盤とした分析技術の研究者が集まり、お互いに意見交換をすることを目的としている。参加者は開催国のタイをはじめ、アメリカ、中国、スイスといった世界中の該当分野の研究者である。今回はタイのバンコクにて、2018年12月2日から7日の6日間にわたり開催された。本学会ではFIA (Flow Injection Analysis) や、SIA (Sequential Injection Analysis) をはじめ、固相抽出やマイクロ流体紙基板分析デバイスといった、多岐にわたる流体を用いた分析装置についての議論が行われた。

また、2018年12月1日には、本会議に先立ち、International Student Symposium in Analytical Sciences and Physical Chemistry(学生シンポジウム)が開催され、タイ、インドネシア、日本の学生による口頭発表が行われた。各国の文化を紹介しあう企画も催され、研究のみならず、文化交流が非常に盛んな会議であった。

次回の開催は2021年8月29日から9月3日、ポーランドのクラクフを予定している。

2. 研究テーマと討論内容

発表題目:Paper-based analytical device for power-free zinc ion concentration and quantification in water samples

ポスター発表

電気的な装置を用いず、高感度な流体紙基板分析デバイス(PADs)として、サンプルの濃縮、前処理及び比色検出を行うことのできるPADsを開発した。一般的なPADsは、流動速度及びサンプル量が限られてしまうという問題がある。これを解決するため、本研究ではPADsを多層構造とし、サンプルの流れを垂直方向とすることで流動速度の改善を行った。吸水パッドをPADsに組み込むことで、1 mLという従来のPADsに比べて多量のサンプルを利用することができるようになった。本研究では、生体や環境水に含まれ、測定のニーズがある亜鉛イオンを検出した。検出エリア上で亜鉛を捕集することで、濃縮及び比色検出を行う。本研究では、亜鉛イオンと錯形成し色変化する比色指示薬としてZinconを利用した。Zinconを用いた亜鉛検出には塩基性条件および阻害イオンである銅イオンのマスキングが必要となる。バッファー及びマスキング剤を、サンプルが最初に透過する試薬滴下エリアであるグラスファイバー層に設置した。以上のシステムを組み込むことにより、1 mLのサンプルを加えるだけで、pH調整、阻害イオンのマスキング、分析対象の捕集及び比色検出を行うことができるデバイスを達成した。作製したデバイスは、最低検出可能濃度は0.53 µMを達成し、これはアメリカ環境保護庁で定められた環境基準に対応することができる優れた結果であった。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

学生シンポジウム

初めての国際会議であり、多くの研究に関する議論を行うことができた。

学生シンポジウムでは、インドネシアの方の英語を聞き取ることができず、十分な質疑応答をすることができなかった。この反省から、昼食やエクスカージョンの時間にたくさんの学生、教授とコミュニケーションをとることで、耳を慣らすことができた。その結果、本番のFlow Analysisポスター発表では、研究内容について十分な議論を英語で行うことができた。このとき、自分の研究内容である紙基板分析デバイスと、FIAや固相抽出を行う人では、同じ結果を見ても着目する点が異なることに驚いた。これにより新しい知見を得ることができ、今後の研究の改善となる意見を得ることができた。

最後になりますが、本会議に参加に際し貴財団から多大なご支援を賜り、心から御礼申し上げます。

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