Washington State Convention Center
Applied Superconductivity Conference (ASC) は2年に一度、アメリカ合衆国で開催される超伝導応用分野の会議として世界で最も大きい国際会議である。今年の発表件数は約1,650件を超え、超伝導応用関連の最新技術の成果について発表された。
今回の国際会議はシアトルにあるWashington State Convention Centerで10月28日から11月2日までの6日間にわたって開催された。超伝導マイクロ波デバイスや超伝導材料といったエレクトロニクス、マテリアル関連等の様々な分野の研究について発表が行われ、超伝導ケーブルや冷凍機等の企業出展も数多く行われた。
超伝導送信フィルタの実用化には通信基地局の規模により1~100 Wもの大電力下でも運用できる耐電力特性が要求される。それと同時にコスト削減のために送受信フィルタを同一の冷凍機に入れ使用することが求められている。そこで本研究室では耐電力特性の向上と小型化を同時に実現できる超伝導送信フィルタの研究を行っている。これまで最大の耐電力特性を実現できる構造はマイクロストリップライン(MSL)構造を用いたデュアルモード共振器フィルタである。しかし、フィルタ構造上の問題からこれ以上の小型化と高い耐電力特性を実現することが困難であった。そこで、本研究では、小型・高耐電力特性が期待できるダブルストリップ共振器(DSR)構造を提案し、それを用いたデュアルモード共振器フィルタの設計と耐電力特性の測定を行った。また損失の原因となっていた給電構造についても新しい給電構造の提案を行い、損失の改善を行った。本発表では、提案したDSR構造を用いたデュアルモード共振器フィルタはMSL構造を用いたデュアルモード共振器フィルタに比べ小型かつ高い耐電力特性を実現したことについて報告した。加えて、DSR構造を用いた多段デュアルモード共振器フィルタの設計を行い、DSR構造が多段化したフィルタにも適用可能であることを示した。
従来よりも小型かつ高耐電力を有するフィルタを実現することができたため、超伝導フィルタ関連の研究者からいくつもの質問をしていただくことができた。主にDSR構造フィルタの耐電力特性の測定結果やフィルタサイズの小型化について議論を行った。
ポスター発表の様子
海外で開催される国際会議はこれまで参加したことがなく、英語での発表、質疑応答も経験もあまりなかったため、発表にはかなりの不安があった。しかし、興味をもって質問してくださった他の研究者にはできるだけ理解していただきたいという気持ちがあったため、全力で説明に取り組んだ。そのため、英語での質疑応答ではこれまでの国際学会よりも質問に答え、意見交換を行うことができた。一方で、質問の意図や内容を理解できず、十分に議論を交わすことができない場面もあったため、英語能力の不十分さも感じた。今後、技術者とのコミュニケーションを通して学んだことを研究に活かすためにも英語能力の向上に努めたい。
研究成果については従来よりも改善した点や測定結果について他の研究者から高い評価をいただいた。また、改善が必要な点など今後の研究に活かすことができるアドバイスもいただけた。
最後になりますが、本国際会議への参加にあたり多大なるご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。