開催地のホテルのビーチ
World Conference on Photovoltaic Energy Conversion (通称WCPEC) はPVSEC, EU PVSEC, IEEE PVSECという3つの国際会議により合同で4年毎に開催させる太陽電池分野に焦点を当てた世界最大の学会である。第7回を迎えた今大会は6月10日~6月15日の6日間、アメリカ合衆国のハワイ島にあるWaikoloaにおいて開催され、世界60ヵ国から600以上の研究機関が参加した。一口に太陽電池とは言っても、新材料やデバイス、システムなど幅広い分野の人々が集まっており、同じ分野同士はもちろんのこと、他分野の方々とも積極的に知識の交流がなされた。また、世界各地から学生も多く参加しており、不慣れながらも各分野のトップグループの方々と最先端技術の議論を交わしている場面がよく見られた。私はポスター発表にて参加させていただいたが、口頭発表に参加している学生も当然おり、学生とは感じさせない力強い発表がみられた。また、今大会は開催地がリゾート地ということもあり、会場内にビーチがあるように学会の息抜きにビーチを楽しむ人々の姿も見られた。
発表の様子
現在、結晶シリコン太陽電池の変換効率は限界である理論効率に近づいており、発電効率の大幅な向上を見込むことはできない。そこで、シリコンナノ粒子を用いて、薄膜結晶シリコン太陽電池を作製することにより、低コストな薄膜結晶シリコン太陽電池を実現した。具体的な構造として、i型シリコンナノ粒子とp型およびn型アモルファスシリコンを用いてp-i-n構造を作製した。シリコンナノ粒子のi層を導入することにより、光を電気へと変換する層を拡大した。しかし、シリコンナノ粒子膜は抵抗が高く、太陽電池として利用するためには高温処理などにより低抵抗化する必要があるが、高温過程はコストが高い。そこで、プレス処理を導入することにより低コスト化に成功した。常温によりプレスを行うという過程は高温過程に比べて大幅なコスト削減となる。また、プレスを行うことで導電率が向上する結果を確認した。i型シリコンナノ粒子を用いたプレス法による太陽電池は世界初であり、多くの方々から面白い成果だという声をいただくことができた。また、今後の展望や評価方法などについてアドバイスもいただくことができた。
自身のポスター発表において、様々な方々と議論を交わすことができた。今回は、2回目の海外の発表であった。前回はとても緊張して自分から話しかけることができなかったため、今回は積極的に自分から話しかけることを意識した。その結果、多くの方々と質疑応答をすることができた。特に、自分では気付くことができなかったことが多くあったことが分かり、今後の実験をする上での参考になる意見をいただくことができた。私の研究は世界初であるため参考となる文献がとても少ない。今回、世界でもトップクラスの方にアドバイスしていただけたことはとても貴重な経験であった。しかし、英語による専門的な議論はとても難しく感じ、自分の英語力がまだまだであることを痛感することとなった。日常会話はもちろんのこと、専門的な議論を英語によりできるようになるために、これからも英語力の向上を図りたい。また、太陽電池の最新の成果発表を聞くことができたことはとても大きな収穫であった。結晶シリコン系はもちろんのこと、ペロブスカイト型太陽電池など他分野の研究成果を聞くことにより、結晶シリコン系の現状や特性をよく理解することができた。今後、太陽電池業界はますます発展していく可能性を感じ、私自身その発展に貢献したいと思う。今回の経験を通して、自分の研究指標を再確認するとともに、新たな知見を得ることができたためとても良い経験であった。
最後に、本国際会議へ参加するにあたり多大なるご支援を受け賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。