EUCASはEuropean Conference on Applied Superconductivityの略で、ヨーロッパにおいて隔年で開催されている科学者や技術者のための世界的なフォーラムであり、伝統的な材料や導体に焦点を当て、大規模アプリケーションから小型電子デバイスまで、応用超伝導のすべての分野で知識と最新の進歩を共有する理想的なプラットフォームを提供している。
13回目となる今回は、スイスのジュネーブにあるCICG Geneva - Centre International de Conferences Geneve (ジュネーブ国際会議場)にて9/17~9/21の期間に開催された。
周波数が0.1~10THzの領域にあるテラヘルツ波帯の電磁波は、光の直進性と電波の透過性を兼ね備えており、情報通信やセキュリティといった様々な分野への応用が期待されている。しかし、テラヘルツ波帯は容易には取り扱うことのできないテラヘルツテクノロジーギャップと呼ばれる未踏技術領域になっている。我々は高温超伝導体を用いた固有ジョセフソン接合からのテラヘルツ波放射に着目し、研究を行っている。ジョセフソン接合は非常に薄い絶縁体を二枚の超伝導体でサンドイッチした構造をしており、この接合間に超伝導電流がトンネルして流れるデバイスである。この接合の両端に電圧をかけると、接合間にかかる電圧に比例する周波数の交流超伝導電流が流れ、電圧-周波数変換器として機能する。これまで最高約1.2THzの放射が確認されているが、放射の再現性が低いという問題がある。
講演では、“Terahertz emission from electrode structure optimized Bi-2212 intrinsic Josephson junctions”という題目で2時間のポスター発表を行ない、テラヘルツを放射しないデバイスからの放射を復活させ、安定した単色のテラヘルツ波放射を得るための最適な電極リードの構造を提案した。改良にはUVレーザートリミング装置を用い、大気中で行った。電極リードの最適化を行ったデバイスから、単色のテラヘルツ波放射を得ることができた。次にマイクロストリップラインモデルを用いて電極リードのインダクタンスの変化を数値的に評価した。接合の高周波的な絶縁が、ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ波放射デバイスにとって重要であることを示した。
国際会議への参加は博士前期課程1年の時に続き2回目であるが、今回発表をしたポスターセッションでは活発な議論をすることができた。また、以前の会議で知り合った研究者とお会いして原理や改良点についてのディスカッションをするなど有意義な経験をすることができた。研究内容では、テラヘルツ波放射デバイスの歩留まり改善について有用な方法を提案することができたと感じている。
また、同じジョセフソンデバイスについての発表や、冷却技術に関する発表の聴講を通じ、様々な面でさらなる研鑽を積んでいく必要があると感じ、大変良い刺激になった。
最後に、本国際会議へ参加するにあたり「国際交流助成金」を交付してくださった一般財団法人 丸文財団に心より御礼申し上げます。