発表会場(Congressi Stefano Franscini)でのopening
International Symposium on Monolayer Protected Clusters 2017 (ISMPC17)は、配位子保護金属クラスターの合成法、物性調査、構造・理論、分光解析、応用利用に関する最新の研究・動向を議論する国際学会です。2008年に第1回がフィンランドで開催されて以来隔年で開催され、今年で5回目を迎えます。今年はスイスでの開催となり、4日間の会期で75名が参加しました。会期中には、8件の基調講演、8件の招待講演、19件の口頭発表に加えて2日間のポスター発表が行われました。
前回のISMPC15は日本で開催され、私も参加いたしました。今回は2度目の参加で、研究発表の聴講の他、自分の研究成果に関してポスター発表を行いました。会期中に次回の開催について会議が行われ、次回は2019年に中国・廈門で開催されることとなりました。
ポスター発表の様子
「In-source CID measurement of thiolate-protected gold clusters」というタイトルでポスター発表を行いました。ポスターセッションは2日間にわたって行われ、先生方を始め、学生の方々にも数多く発表を聞いていただくことができました。特に学生の方々は、食事や休憩時間に話した方が見に来てくださることも多く、積極的に議論ができたと感じました。
今回の発表では、衝突誘起解離(CID)という、標的イオンをガス分子と衝突させて解離を発生させる手法を、配位子保護金属クラスターに適用した結果を報告しました。チオラートやホスフィンといった配位子で保護された金クラスターのCID質量分析を行うと、チオラートの場合Au4SR4のようなオリゴマー構造や有機鎖の脱離が、ホスフィンの場合配位子の逐次的な脱離が観測されました。
今回の学会では合成や液相反応・理論計算を行う参加者が多い一方で、私の発表は気相真空実験に基づく内容であったため、「これはどのように利用していけば良いのか」「どのような新しいことがわかるのか」といった質問をよく聞かれました。そのため途中からはそれらの内容を踏まえて説明をするように心がけました。液相反応を行う方々から「このような反応に適用したら面白いかもしれない」「この構造がわかると嬉しい」といった意見をいただけたことに加え、他の研究者は自分の研究内容のどこが気になるのかという点を知ることができたよい機会だったと思います。
学会では、金属クラスターに関する最新の研究報告が行われました。傾向としては、触媒応用などの報告よりも、特に異種金属元素のドープや配位子交換反応といったトピックが数多く扱われていたように感じました。
今回の学会は、宿泊・食事・発表を全て同じ建物で行う形式だったため、朝昼晩の食事の際などにも、他の参加者と会話をすることができました。フィンランド・スイス・アメリカ・サウジアラビアなど様々な国の方とコミュニケーションを取ることができ、楽しく過ごしました。また、こうした食事等で英語を話す・聞くということに慣れておくと、発表を聞いたり話したりしやすくなったと感じました。
また、私が今回行ったポスター発表は、「Award for the best poster」に選出していただきました(受賞は29件中1件)。最終日に表彰が行われ、金属クラスターの教科書を副賞としていただきました。
最後に、今回の国際会議参加に際し渡航費の援助をいただきましたことに厚く御礼申し上げます。