AVS International Symposium and Exhibitionは米国真空学会American Vacuum Society主催の年次大会であり、真空技術を応用した幅広い分野の講演や展示が行われる。64回目となる今回はフロリダ州タンパにあるコンベンションセンターで開催され、2,000人以上の研究者および200社以上の企業が世界中から集まった。会議のテーマは、真空技術に始まり、薄膜やバイオマテリアルにおよぶ25分野から構成され、多くの議論や交流が行われた。また産学関連の発表だけでなく、アートコンテストやランニングなどの文化的なイベントも開催され、大変盛況であった。次回は、2018年10月にカリフォルニア州ロングビーチで開催予定である。
Tampa Convention Center外観
似顔絵を描いていただく様子
発表時の様子
自動車業界では人間と自然との共生に向けて、排気ガスの浄化やCO2削減などの環境に配慮した技術の構築が急務となっている。自動車排出ガスには有毒ガスが含まれており、このうち窒素酸化物NOXは、貴金属触媒で還元され無害化されている。今後、低燃費化に向けて燃料の薄い混合比で燃焼を行った場合、排出ガスは酸素過剰雰囲気となり、NOXの還元が困難になる。この問題に対処すべく、酸素過剰雰囲気での金属表面の酸化還元過程の解明が必要とされている。そこで、本研究では、安価な金属触媒としてNiを選定し、リアルタイム光電子分光によりNi表面で進行する酸化還元反応について研究を行っている。
今回は、Ni表面への酸素吸着および脱離過程における表面酸素原子の挙動について発表を行った。質疑では、表面モホロジーに酸化還元反応が依存するのではないかという指摘があり、今後STM等による実験を行い比較する必要があると感じた。また、XPSデータの有無についての質問があったため、今後はUPSとXPSデータを比較提示し、それぞれの利点を生かした報告ができるよう努めたい。
会議では、大気圧下での光電子分光測定に向けた報告が大変多く、本研究分野が今後さらに重要になると感じた。また、私の発表は学会5日目であったため、発表前に他の講演を聴くことができた。しかし、本場の英語はスピードが速く、初見の単語も多いため、正直すべてを聴き取ることは困難であった。そのため、発表前は特に質疑応答に対する不安が大きかった。しかし、発表本番ではいただいた質問内容を理解し応答することができたと感じている。この経験から、語彙力が不足していることに気付き、今後は語彙力の強化に注力したいと思っている。
また、今回の出張では僅かな時間ではあったものの、ハロウィン等の米国文化を体験することもでき、非常に良い経験となった。
最後に、本会議への参加にあたり、貴財団から多大なご支援をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。
ハロウィンのために装飾した家