「International Conference on Diamond and Carbon Materials (ICDCM)」はヨーロッパで開催される最大規模の炭素材料系に関する国際会議である。対象となる研究はグラフェンやダイヤモンドなどの炭素の材料の研究だけでなく、それらを用いたデバイス等も対象となっている。
28回目となる今年の学会はスウェーデンで行われた。学会会場では、炭素材料に関連した企業ブースもあり、様々なバックグランドを持った研究者と交流できた。専用のアプリケーションにより学会情報を簡単に確認することも試みられており、学会運営側の工夫と努力を感じることができる学会であると感じた。
報告者は、「ダイヤモンドのニッケル触媒を用いた加工プロセス」に関連した研究結果を報告した。
ダイヤモンドはその優れた材料特性から、究極のパワーデバイス材料として期待さている。一方でダイヤモンドはその優れた特性である物質中最高の高度や極めて高い化学的安定性ゆえに、加工が困難なことが知られている。そのため、ダイヤモンドの加工にはプラズマ処理が用いられるが、プラズマ処理ではプラズマダメージによりダイヤモンドのデバイス特性劣化を引き起こす。そこで、本研究では、Niの炭素固溶反応を用いた加工方法に着目した。炭素固溶反応は、非プラズマ処理であることからプラズマダメージがなく、またダイヤモンドを高い選択比を持って加工できることがわかった。また、本学会発表ではそのダイヤモンドのエッチングメカニズムの解明を目的とし、発表後聴衆および議長から追加の質問を受けるほどに有意義な発表を行うことができた。
図1:発表の様子(左 発表中、右 発表後)(上 発表中、下 発表後)
本学会に参加した一番の成果と思われるのは、世界規模で、近い研究テーマを持つ研究者との交流を行えたことである。報告者は海外で行われる国際会議としては初参加であり、そういった意味でも普段得ることのできない交流の場を広げる機会となった。アメリカやフランス、ドイツなど様々な国から参加した研究者と交流し連絡先の交換を行えた。
また、本学会において、興味深い研究成果を聞くことができた。その一つに、“Defect analysis of freestanding diamond substrates and homoepitaxial diamond films”の発表で報告されたX線での欠陥評価がある。一般的にX線を用いた結晶評価において半値幅が用いられることが多い。この発表では、欠陥の評価に半値幅以下の位置にあたるピーク根元に注目し欠陥が多いほどピーク根元幅が広がる傾向にあることを示していた。報告者の研究において、欠陥評価は大きな課題の一つである。ぜひ取り入れたい技術だと思えた。
一方で、報告者の課題を見つけることもできた。その一つが訛りの異なる英語のリスニングである。報告者はドイツに1年留学した経験があり、英語でのディスカッションを何度も経験していた。しかし、多くの国の研究者が参加する国際学会では、それだけその国ならでは訛りや表現方法の違いがあり、対応に苦労した。普段から様々な国の研究者との交流を行うことで解決を図っていきたい。この国際学会でそのきっかけもつくることができた。
最後に、本学会への参加にあたり、多大なる御支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。