ICTとは、International Conference on Thermoelectricsの略称で、国際熱電学会のことであり、今回のパサデナで第36回を迎えます。国際熱電学会の開催地は毎年アメリカ、ヨーロッパ、アジアの順にローテーションしていて、来年はヨーロッパのフランスで開催する予定です。ICT2017は、アメリカのパサデナで開催されました。パサデナはロサンゼルス北東に位置する高級住宅街で、カリフォルニア工科大学やジェット推進研究所、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインなどの科学や芸術分野の教育研究機関の所在地としても知られています。
今年はオーラル発表216件で、ポスター発表が338件で、充実した学会でした。
今回のポスター発表で発表した内容は液体急冷法を用いたSi/WSi2ナノコンポジットの作成及び熱電性能の評価です。環境調和型材料であるSiの熱伝導率の低減による熱電性能の向上は,熱電材料の実用化の観点から重要な課題です。先行研究の理論計算により,Si母相にナノサイズのメタルシリサイドを導入することで熱伝導率を下げることができ、さらに、メタルシリサイドの密度とSi母相の密度差が大きければ大きいほど、熱伝導率も低減することが示されている。そこで本研究では,Si母相との密度差が大きいWSi2に着目し,液体急冷法を用いてSi/WSi2ナノコンポジットを作製し,熱伝導率の低減を試みました。その結果、Si中に50-500nm程度のWSi2を析出させました。これより、試料の熱伝導率は比較試料と比べ,室温付近で14 %低減できたことを中心に発表しました。本会議は私の研究分野であるナノ析出物を専門とする方が多く見に来ていただきました。その際、Siに固溶したWSi2の影響に関する質問を受け、補足用実験データを用いて口頭で説明して討論することができました。
本会議に参加し、多くの発表を聞き、世界各地から来たさまざまな研究者と話すことで、研究の新たな展開の発想を得ることができました。また英語で学術的な討議を行う能力がとても重要だとわかりました。このような大きな国際学会でポスター発表参加するのは初めてのことであり、非常に良い経験になりました。今後さらに、研究に精進していきたいと思います。
最後になりましたが、本会議への参加にあたり多大なる支援をいただきました貴財団に深く御礼申し上げます。