Conference on Lasers and Electro-Optics/Europe and the European Quantum Electronics Conference 2017 (CLEO/EUROPE-EQEC2017) は隔年で開催され、レーザーだけでなくその応用分野や最新光デバイスに関する大規模な国際会議である。今年もドイツのミュンヘンにあるICMセンターにて5日間にわたり開催され、1,700件を超える講演が行われた。中でも、私の研究分野であるファイバレーザーの講演数は前回より増えており、本分野が隆盛していることを実感した。講演の内容については高出力ファイバレーザーや中空コアファイバレーザーに関する報告が活性化しているように感じた。また、ファイバ内における非線形光学効果の応用技術に関する講演があり、私の研究課題と類似していたことから、大変興味深かった。
その他、世界各国のレーザーならびに光学関連の製品を扱う企業が集結する大規模な展示会も併設されており、海外企業の最新技術やレーザー市場の動向を伺うことができ、第一線で活躍している研究者と議論を交わすことができた。また、日本企業も多く出展されており、海外企業に負けない日本の技術を肌で感じることができた。
国際会議場のICMセンター
展示会の様子
ポスター発表の様子
今回、“Development of ultrashort pulse amplification system by all fiber passive phase matching coherent addition technology” という題でポスター発表を行った。私の研究は、コヒーレント加算方式を用いた超短パルスファイバレーザーの高出力化を目的としている。超短パルスファイバレーザーは難加工材料を高精度かつ高速にレーザー加工するために、高エネルギー化が求められている。しかし、従来技術では非線形現象によりエネルギー限界が生じるため、私は「コヒーレント加算方式」を用いた超短パルス増幅システムを開発している。コヒーレント加算は単一パルス光を複数に分割し、各パルス光の出力を増幅した後、全てのパルス光の位相を揃えて再び単一パルス光に足し合わせる高出力化技術である。しかし、周囲の温度変化により、光ファイバ内を伝搬するパルス光の位相は経時的に変動するため、合波後の出力を安定化するには、手動制御ならびに複雑なフィードバック回路が必要であった。そこで、位相および偏波の制御を必要とせず、各パルス光の位相および偏波が受動的に一致する新たなコヒーレント加算光学系を開発した。
本発表では主に二つの質問をいただいた。一つ目に受動一致を可能としているシステムに関する質問、二つ目に従来技術に比べコヒーレント加算が有効な点に関する質問であり、多くの研究者に関心を持っていただいたと感じた。
レーザー分野において最高峰の本国際会議で発表を行えたことは自身にとって良い経験となり、また、多くの研究者と議論を交わすことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができた。自身のポスター発表では、研究内容や本研究で一番伝えたいことを正確に話すことはできたが、不安や緊張もあり、相手の質問を深く理解ができなかった。また、自身の英語力の不足に痛感した。しかし、拙い英語でありながらも自身の研究に興味を持っていただいた方と積極的に議論を交わすことができたことに充実感を感じた。
この度の国際会議参加にあたり、貴財団には多大な御支援をいただきました。
心より御礼申し上げます。