会場のShaw Foundation Alumni House,
National University of Singapore
この学会は、スマートマテリアルの研究と応用に関する国際会議であり、2018年1月26~28日にシンガポールで開催された。スマートマテリアルに関わる産業界とアカデミアのリーダーが集まり、互いの経験や研究成果を共有して新しい技術の開発および共同研究の促進することが本会の目的である。本会は、世界大学ランキングにおいてアジアでトップの大学であるシンガポール国立大学で開催され、シンガポール・中国・台湾・韓国・日本をはじめとしたアジア諸国およびアラブ地域、ヨーロッパからの参加者など国際色豊かな研究者が参加した。5名の著名な研究者による講演に続き、8つのセッションが設けられ、基礎研究から工学応用に至るまで幅広い研究内容について活発な議論が行われた。
ガラス転移温度(Tg)は非晶性ポリマーのプロセスおよび使用用途の拡大にとって非常に重要な指標であり、非晶性ポリマーの耐熱性を向上させるにはTgを上昇させる必要がある。これまでに我々のグループでは、特殊な金属塩を添加するだけで、ポリマーと金属イオン間にはたらく相互作用による疑似的な架橋構造を形成してポリマー分子鎖のセグメント運動を抑制することで、ガラス状ポリマーであるポリメタクリル酸メチル(poly(methyl methacrylate) (PMMA))のTg上昇を達成することを報告してきた。今回の講演では、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)と臭化リチウム(LiBr)の2種類の塩をPMMAに添加したときのTgへの影響およびそのメカニズムについて報告した。
講演では、本研究の独創性と、その有用性を示すことに注力した。講演中に、聴衆が時折大きく頷くさまが見てとれたため、全体的にわかりやすい発表に仕上げることができたと思う。
本会は、スマートマテリアルに関するありとあらゆる分野の研究者が一堂に会するため、普段、研究室で聴く機会がない無機材料やディスプレイ開発に関連するようなプレゼンテーションを聴くことができて、良い刺激になった。
ベストプレゼンテーション賞の賞状
自身の研究発表については、異なる分野の研究者にも関心を持ってもらえるように、内容を推敲した。また、国際学会での口頭発表は2回目であり、不慣れな英語でのプレゼンテーションに緊張していたため、何度も自分で発表練習を行った。そのかいがあって、ベストプレゼンテーション賞を受賞することができた。発表者の多くが教授や准教授という中でこのような賞をいただけたことは励みになった。休憩時間に、タイの研究者と台湾の教授から、「面白い研究をしているね」と声をかけていただけたことも嬉しかった。今後、さらに研究にまい進していきたいと思う。
また、会場のシンガポール国立大学の設備がとても充実していることと、エネルギッシュで国際的な雰囲気をうかがい知れたことも、貴重な体験となった。今回の会議への参加により、一段と海外で研究することに興味が沸いた。
最後に、本会議に参加するにあたってご支援をいただいた一般財団法人丸文財団にこの場を借りて心より御礼を申し上げます。