EU PVSECは30年以上もの歴史があり、太陽電池の研究において最も大きな国際会議の一つとして位置づけられています。太陽電池に関する最新の成果について討論したり交流を図れます。発表件数は1,000件以上にのぼり、うち3割が口頭講演、7割がポスター発表です。セッションの数は大きく分類すると7つ、小さい分類で合計20あります。最も一般的なSi太陽電池、低コスト太陽電池として最近注目されているペロブスカイト太陽電池、低コストと効率をバランスしているCIGS太陽電池、私の研究分野である次世代型太陽電池の量子ドット中間バンド型太陽電池や多接合型太陽電池のセッションなどがあり、太陽電池の研究分野の非常に広い範囲をカバーしています。世界各国の大学だけでなく、研究機関、企業が発表しており、特にプレナリー講演では様々な企業が各々の材料系における世界最高効率の太陽電池の成果を発表します。
発表だけでなく、企業展示も非常に充実しています。また交流の機会として、レセプションパーティやディナーも企画されており、世界各国の研究者と意見交換をすることができます。
私はNew materials and concepts for photovoltaic devicesというセッションでExtended optical response of two-step photoexcitation in InAs/GaAs quantum dot superlattice intermediate band solar cellsというタイトルでポスター発表を行いました。内容としましては、InAs/GaAs単層量子ドットにおいて報告されていた量子ドットキャップ時に基板温度を下げることで量子ドットのサイズの均一性を向上するという手法をInAs/GaAs量子ドット超格子中間バンド型太陽電池に適用し、その太陽電池特性について評価を行いました。時間分解発光測定の結果から従来の成長手法で作製した試料よりも不均一性が抑制され、基底準位のミニバンド形成に成功したことを示し、その結果、これまでは2段階光励起の増強が励起準位波長(1,000 nm)以下だったのが、1,200 nmより長波長側まで増強する波長領域を拡大することに成功しました。この広帯域の拡大により中間バンド型太陽電池における効率向上の肝である赤外域波長を利用した2段階光吸収応答特性が増強したという成果を発表しました。討論では電子だけではなく正孔側ではどうなっているか問われ、さらなる解析が必要であると感じました。また室温動作に向けてワイドギャップ半導体で量子ドット超格子を挟むとどうなるのか問われ、今後の展開に向けて、新たな考えが得られました。
本学会の参加を通して様々な分野の太陽電池の研究者と意見を交わすことができ、今回の研究成果に対してより深い考察を考えることができました。特に量子ドット超格子中間バンド型太陽電池の実用化に向けて大きな指針を得ることができました。また、英語でのコミュニケーションを実際に体験することで、英語のプレゼンテーションをする難しさを実感することができ、自分の研究成果を正確に世界中の研究者に伝えるために英語力を向上させる必要があると痛感しました。
自分の研究発表だけでなく、他研究において、Si太陽電池では最近では両面発電が可能なPERT太陽電池があることなどを知り驚きました。また、ドイツの大学で我々のグループでも研究しているホットキャリア太陽電池を研究し、我々とは材料系が異なるものの進んだ成果を挙げていました。その先生とも意見交換し、いただいた意見は今後の我々のグループ内でも生かすことができると思います。
学会全体として太陽電池の現状を知ることができました。様々なコンセプトの太陽電池の変換効率や発電コストを知りましたが、我々の研究では基礎研究の段階です。変換効率や発電コストといった議論ができるように研究を進めていく必要があると感じました。
今回このような貴重な機会をいただけましたのは丸文財団の御支援あってのことです。心より感謝申し上げます。