壁面を太陽光パネルで覆った建物
(フライブルク市内)
SiliconPV 2017(7th International Conference on Crystalline Silicon Photovoltaics 2017)は結晶シリコン太陽電池の高効率化技術に関して、材料技術からセルプロセス技術まで幅広く討議する国際会議であり、論文の採否を著者名や所属機関をブラインドにして行うユニークな特徴をもつ。本会議は毎年ヨーロッパで開催され、7回目となる今回は、ドイツの環境首都として知られるフライブルクにて行われた。フライブルクの環境意識は非常に高く、街中の至る所で太陽光発電が行われるなど、再生可能エネルギー導入のモデルケースとして有名である。主催したドイツのフランホーファー太陽光エネルギー研究所は、ヨーロッパ最大の太陽電池研究機関であり、多結晶シリコン太陽電池の世界最高効率を達成するなど、非常に高い技術を有している。今回の会議は、世界25の国と地域から380名の参加があり、2件のプレナリー講演と2件の招待講演を含む78件の口頭発表および138件のポスター発表が行われた。また、本会議はすべてのプログラムがシングルセッションで行われ、世界中の結晶シリコン太陽電池研究者が一堂に会する中、活発な議論が行われた。次回の会議(SiliconPV 2018)は、2018年3月にスイスのローザンヌで行われる予定である。
現在、太陽電池として用いられている材料の90%以上は、結晶シリコンである。これは、シリコンが地殻中に豊富に含まれ原料コストが低い事に加え、太陽電池として優れた物性(バンドギャップ:1.1eV)を有するためである。結晶シリコンは単結晶と多結晶に大別される。単結晶は、結晶欠陥がないため高効率な太陽電池を得ることができるが、歩留まりが悪く、製造コストが高いといった課題をもつ。一方多結晶は、転位や粒界といった結晶欠陥をもつことや、製造時に不純物が混入しやすいため、太陽電池としての効率は単結晶に比べて低いものの、一度に大量に生産できるため低コストで製造できる。このような背景から、結晶シリコン太陽電池の更なる普及を加速するため、単結晶と多結晶の利点を併せ持つ新規結晶成長技術の開発が求められている。本発表では、我々の研究グループが考案した革新的結晶成長技術であるSMART(Seed Manipulation for ARtificially controlled defect Technique)法を用いることで、高品質性と高生産性を併せ持つ擬似単結晶を実現し、太陽電池に悪影響を及ぼす不純物を局所的に閉じ込めることに成功したことについて報告した。
フライブルク旧市街
世界中の結晶シリコン太陽電池研究者が一堂に会する本学会において、我々の研究グループが考案したSMART法の有効性をアピールできました。本手法が将来、産業レベルで用いられることとなれば、現在流通している多結晶シリコンを100%単結晶化し、太陽光発電の発電コストを大幅に削減することが考えられます。その実現に向け、本会議がきっかけとなって、海外の研究機関と連携し、より大型の装置を利用した実験を進められればと考えています。
今回は、私にとって初めての海外で行われる国際会議への参加で、多くの方々との議論を経験できました。一方で、英語コミュニケーション能力にまだまだ至らない部分があることも痛感いたしました。この経験を踏まえ、より一層英語力の強化に取り組みたいと思います。
会議期間中は、温暖な気候の中、晴天にも恵まれ、緑豊かで美しいフライブルクの街を散策できました。この経験は、環境問題に貢献したいという私の想いをより一層強くしました。
本会議に参加するにあたり、貴財団からは多大なる御支援をいただきました。最後になりますが、心より感謝申し上げます。