米国光学会(OSA)の年次会議であるFrontiers in Optics (FiO)は光学・フォトニクス分野の最新研究が数多く発表される国際会議であり、今年で101回目を迎えた。本年度の会議はワシントンDCで開催され、日本からはダレス国際空港への直通便が運行しているため、片道13時間ほどで到着することができる。合計55にも及ぶセッションで口頭発表とポスター発表合わせて計718本の学会論文が4日間で発表され、多くの活発な議論がかわされた。今年はAutomotive,Nanophotonics and Plasmonics,Optics in Computing, Virtual Reality and Augmented Visionという4つのテーマが掲げられた。会場ではVR体験や日本メーカー製の水素自動車の展示が行われており、光分野としてもVRや自動車といった技術に大きな関心があることがうかがえる。レセプションパーティーではサウンドに加えて照明などのライティングに凝った演出がなされ、いかにも光を専門とする学会らしいという印象を受けた。これまでは米国各地を転々としながら開催された本会議であるが、来年度および再来年度もワシントンDCで開催されることが決定している。
2005年のノーベル物理学賞の対象となった光周波数コムは周波数軸上に等間隔に並んだ非常にコヒーレンスの高い光であり、周波数標準や分光といった応用に向けて様々な研究がなされている。近年、超小型かつ省エネな光周波数コムとして光カーコムとよばれる全く新しい光周波数コムが報告され、大きな注目を集めている。
本研究では正常分散領域におけるモードロック(パルス化)状態に着目し、結合共振器系を用いた光カーコム発生に関する数値モデリングとシミュレーションを行った。
結合共振器系とは異なる二つの共振器モードが結合した状態にある系を指し、正常分散領域における光カーコム発生に必要とされる。ところが系の複雑さゆえにこれまで正確なモデリングが行われておらず、十分な理解が得られていなかった。そこで光カーコム発生を記述する非線形結合モード方程式に結合項を加えたのち、異なるそれぞれモードを連立して解くことで、結合共振器系における光カーコム発生を正確にシミュレーションすることに成功した。これによりこれまで明らかにされてこなかった複雑な物理を解明する手段を得ただけでなく、シミュレーションを基盤とする実験結果の理論的な検証が可能となることが期待される。
自身の発表ではショートプレゼン形式の口頭発表とポスター発表を行った。口頭発表はポスター発表を行う数十名の中から数名が選ばれて行うもので、質疑応答なしという通常の口頭発表とはやや異なる形式で行われた。口頭発表を終えたあとはすぐにポスターに移動して発表を行った。類似の研究を行っている海外のグループの学生がすでに待っていてくれ、お互いの研究の違いや特徴について専門的で有意義なディスカッションができた。その他にも多くの学生や先生とディスカッションすることができ、2時間の発表時間をいっぱいに使って意見交換をすることができたことが収穫であった。また、アメリカや中国、インドをはじめとして様々な国の人と話す機会に恵まれたが、普段聞くことの少ない癖の強い英語になると途端に理解が追いつけなくなることを痛感し、さらなる英語力の向上が必要だと再認識する貴重な経験になった。
最後になりましたが、本学会へ参加するため多大なご支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。この経験を糧として、より一層研究活動に精進してまいります。