The International Conference on Solid State Protonic Conductors(SSPC)は燃料電池や水蒸気電解システムの電解質・電極に使用される固体プロトン伝導体に関する国際会議です。現在、燃料電池は固体酸化物形(SOFC)が主流ですが、作動温度が高く構成材料の劣化が問題となっており、作動温度の低温化を実現するプロトン伝導性材料の開発が盛んに行われています。
SSPCは2年に一度開催されており、第18回目となる本会議はノルウェーのオスロにて9/18~23の日程で行われました。参加者はおよそ180名と小規模な学会でしたが、本会議にはプロトン伝導体の権威を始めとする各国の研究者が一堂に会し、ハイレベルな議論が展開されました。また初日には歓迎パーティ(Welcome Reception)が、4日目には小旅行(Excursion)および懇親会(Banquet)が企画され、盛況でした。
Excursionにて
(ヴィーゲラン彫刻公園、
ヴァイキング船博物館)
本会議では“New Proton Conducting Phosphate Glass Fabricated by Electrochemical Alkali-Proton Substitution at Intermediate Temperature”という題目でポスター発表を、また急用で来られなくなった指導教員の代理で“Mobility of Proton Carriers in Proton Conducting Phosphate Glasses Fabricated by Electrochemical Substitution of Sodium Ions with Protons”という題目で口頭発表を行いました。私たちのグループではリン酸塩ガラスの高いプロトン移動度や幅広い組成を作製できるといった特徴に着目し、プロトン伝導性リン酸塩ガラスの電解質材料の開発を進めています。独自に開発したガラス中のアルカリイオンをプロトンへと電気化学的に置換する手法を用いて、ガラスに高密度のプロトンキャリアを注入しプロトン伝導性ガラスを作製しています。ポスター発表ではガラス組成の検討の結果得られたガラスのプロトン伝導性や耐熱性について議論しました。現在プロトン伝導体の研究はペロブスカイト型構造を持つプロトン伝導性セラミクスが主流となっていますが、プロトン伝導性に加えて電子伝導性を持つため発電効率の低下が問題となっています。一方、プロトン伝導性ガラスは高いプロトン伝導性を持ちながら電子伝導性がゼロであるという特徴を有しており、多くの研究者の関心を得ることができました。口頭発表では、リン酸塩ガラス中のプロトンの移動度に影響を及ぼす因子について議論しました。移動度を高めるには重合度の高いガラス構造や小さな電気陰性度を持つ成分が必要であることを明らかにし、聴衆から好評を得ることができました。
英語での発表や討論に慣れておらず不安でしたが、いざ発表を始めてみると私の拙い英語にもちゃんと耳を傾けてもらえ、何とか議論を交わすことができました。ExcursionやBanquetでは他国の学生と交流する機会がありましたが、言葉を聞き取れず何度も聞き返しても嫌な顔をせず、懸命に私の言葉に耳を傾けてくれました。拙い英語でもコミュニケーションできることを知り、もっと英語が上手になればもっと深く交流できる、と英語学習に対するモチベーションが一段と上がりました。来年度も国際学会への参加を予定しており、それに向けて英語学習に取り組んでいこうと思います。