IEEE PVSCは、太陽光発電に関する世界最大規模の国際会議で、毎年米国国内で開催されている。43回目となる今年は、環境にやさしい街として知られるポートランドで開催された。本会議では、13の分野からおよそ1,000件の発表があった。米国での開催ということもあって米国からの参加者が53%と最も多かったものの、ドイツ、日本、インド、オーストラリアなど世界各国の研究者を交えて、非常に活発な議論が交わされた。
私の研究テーマは、n型の結晶シリコンウェハを用いて作製された太陽電池の電圧誘起劣化現象に関するものであった。近年の太陽光発電の急速な広がりを受け、太陽電池モジュールの信頼性や長期安定性に関する研究は非常に注目を集めている。その影響もあって数多くの研究者が筆者のポスターを訪れ、多くの有益な議論を行うことができた。本研究で取り上げた太陽電池の構造は、簡単に安く作ることができ、また長期安定性にも優れるため、その太陽電池構造に関する質問を多く受けた。また、劣化の根本的な原因が解明されていないことから、予想される劣化のメカニズムや劣化防止策について議論を交わした。
筆者にとって、海外の国際会議への参加は初めての経験であり、最初のうちは英語でのコミュニケーションに不安を感じていた。しかしながら、海外の研究者はフレンドリーに話しかけてくれる人が多く、次第に不安感が消え、積極的にコミュニケーションをとることができるようになった。アメリカ、中国、台湾の研究者と名刺を交換し、海外の研究者との関係性を築くことができた。また、会場で出会った日本国内では普段話すことができないような日本の著名な研究者と話したり、一緒に食事をとったりすることができたのも大変よい経験であった。
最後に、渡航および学会への参加にあたり、多大なるご支援をいただいた丸文財団様には深く感謝いたします。