基調講演の様子
国際会議Optical MEMS and Nanophotonics 2016 (OMN 2016)では、世界中の大学、政府、産業の研究所で続けられている、光学MEMSとナノフォトニクスの広範囲な研究・開発における、ごく最近の進捗が発表される。また、マイクロ光学、ナノフォトニクスのデバイスとシステムにおける基礎研究や応用研究(光学MEMSとナノフォトニクスに関連する材料やプロセス技術、光学MEMSとナノフォトニクスのデバイスとシステムの応用など)の最新の進捗も発表される。
フォトニクスデバイス・システム/サブシステムは、光通信、物質検知、化学検知、バイオセンシング、光記憶、光学イメージング、光学ディスプレイ、光学器械、バイオメディカル器械に応用されている。光学MEMSやナノフォトニクス技術は、このフォトニクスデバイスとシステム/サブシステムの超小型化を可能にする技術として、様々な研究がなされている。
今回のOMNでは、光学MEMS、フォトニクスをはじめ、メタマテリアル、バイオ医療の応用、プラズモニクスの5分野に関して全24のセッションが組まれた。シンガポール、日本、台湾、アメリカなど9カ国から約130名が参加し、開催国シンガポールからの参加者がおよそ3分の1を占める中、日本からは約30名参加した。発表件数は、招待講演が30件、口頭発表・ポスター発表がそれぞれ74、25件であった。また、本会議の各日のはじめに、各国の著名人による、計5件の基調講演が行われた。
次回のOMNは、2017年8月6-10日にアメリカのサンタフェにて開催される。
自分の発表の様子
眼底検査の検査光は、眼底収差によって光学収差を持ってしまうため、これをリアルタイムかつ精密に補正する必要がある。その手法の一つとして、近年MEMS技術を用いた可変形状ミラーが多く研究されているが、駆動方式の一つの静電駆動型には、変形が凸方向の変形が難しく、変位量が小さいという欠点がある。そこで、我々はこれまでに、凸方向かつ低電圧駆動を実現するため、ピストンアレイ構造を持つ新しいデバイス構造を提案し、有限要素解析により駆動原理を確認した。有限要素解析は解析時間が長く、リアルタイム制御に適していないため、本研究では、板の曲げ理論に基づいて、有限要素解析に代わる簡易な数理解析モデルを構築した。本解析モデルによる解析は、ミラー形状、変形量ともに有限要素解析とほぼ一致し、解析時間も大幅に短縮することができた。また、提案するデバイスを作製し、駆動実験によって動作原理を確認した。結果、本デバイスで、凸変形と複雑な変形を生成できた。また、変位のストロークは解析結果よりも小さいが、変形形状は解析結果とよく一致した。
参加者から質問があがった、実験結果の変位のストロークが解析結果よりも小さかった理由としては、ミラーの変位や静電力によって上下に大きく変位するはずであるピストン構造が、何らかの原因で、スムーズに動作していない可能性があることが考えられる。
本会議は、私にとって二度目の国際会議でしたが、自分の研究を初めて聞く人に理解してもらうことの難しさ、英語での議論の難しさを改めて実感しました。口頭発表は、練習のおかげで無事に乗り切ることができましたが、質疑応答でうまく回答することができず、悔しい思いをしました。今後も英語能力の向上に励んでいきたいと思います。今回の会議の発表の中には光学分野の研究も数多くあったため、自分の研究に共通する部分が多く、今後の研究活動において参考になりました。また、発表外においても、海外の研究者の方々と交流でき、非常に貴重な機会となりました。
最後に、本会議への参加にあたり、多大なご支援をいただいた貴財団に心より感謝申し上げます。
学会参加者の集合写真