国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
作田 陸
(東京農工大学 大学院工学府 生命工学専攻)
会議名
Green and Sustainable Chemistry Conference
期日
2016年4月3日~6日
開催地
ドイツ連邦共和国ベルリン市

1. 国際会議の概要

会場の外観

グリーンケミストリーやサステイナブルケミストリーの研究の多くは化学合成の効率向上や化学物質のライフサイクルに焦点を当て、産業の持続可能性に貢献してきました。そのためこの分野の研究集会は効率向上やライフサイクルを論題としているものが殆どであり、グリーン・サステイナブルケミストリー分野全体の研究者の交流を促すものではありませんでした。Green and Sustainable Chemistry Conferenceはグリーン・サステイナブルケミストリーの幅広い論題を扱う初めての研究集会であり、この分野に関する世界中の研究者をアカデミア、産業問わず招集し、交流させ、最新の知見を共有することを目的としています。そのため、New business modelsやEthics, legislation and economicsなどもトピックとして含まれています。第一回目の開催に関わらず、Green and Sustainable Chemistry Conference によれば700以上のアブストラクトが提出され、それに伴って会期は一日延び、4日間となりました。発展途上国を含め、様々な国の研究者が参加していました。今回のGreen and Sustainable Chemistry Conferenceはドイツ、ベルリンのインターコンチネンタルホテルで行われました。

2. 研究テーマと討論内容

発表会場

本国際会議において、「Galactaric acid production catalyzed by PQQ-dependent glucose dehydrogenase」というタイトルで口頭発表を行いました。ガラクタル酸はアルダル酸に分類される糖酸の一種であり、キレート剤、種々のポリマーなど多様な製品の基幹化合物として期待されています。従来、硝酸を用いたD-ガラクトースの酸化を主としてガラクタル酸の合成が行われていましたが、環境負荷が高く、収率が低いことなどが原因となり新規合成法の検討が行われています。D-ガラクツロン酸はペクチンの主要成分として殆どの陸生植物に含まれ、例えば食料利用と競合しない甜菜や多様な果実の加工残渣としても得ることができます。また、6位末端が既にカルボキシ基であり、1位のアルデヒド基の酸化のみでガラクタル酸生成ができます。本研究では、ピロロキノリンキノンを補酵素として結合するグルコース脱水素酵素(PQQGDH)に注目してD-ガラクツロン酸の酸化を試み、ガラクタル酸とそのラクトンの生成をNMR測定により確認することができました。D-ガラクツロン酸の酸化は、例えば酸素の水への還元と組み合わせることで、エネルギー生産にも利用できます。そこで、PQQGDHを電極触媒として修飾した電極を作製し、電気化学測定を行ったところ、D-ガラクツロン酸の酸化に由来する電流を観測できました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

日本国外で盛んに進められているグリーンケミストリーの講演を多く聴講することのできるまたとない機会でした。グリーンケミストリーの考え方について国内の学会では殆ど学ぶことはできませんが、本国際会議に参加することで理解を深めることができました。ポスターセッションでは、自分の扱っているペクチンという原料を他の応用に展開する研究に触れることができ、参考になりました。

今回国際会議での初めての口頭発表でしたが、事前に研究室で発表練習を繰り返しており、無事終えることができました。口頭発表の後にポスターセッションで話した方に、発表が良かったといってもらい、自信につながりました。

最後に、本会議の参加にあたり、支援いただきました貴財団に心より感謝申し上げます。

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