Asian conference on Biomass Science 2016 (アジアバイオマス会議)は2016年で4回目の国際会議であり、日本エネルギー学会バイオマス部会が主催の会議である。アジアには多くのバイオマス資源があり、その有効利用を進めることは、持続可能な社会の実現のためにも、アジア各国の経済的な発展のためにも、きわめて重要であり、本会議は特にアジアの国々の研究者の間で研究成果や情報の交換の場として開催されている。また、発表論文は査読の上Journal of Japan Institution for Energyへの掲載を予定している。今回はアジアバイオマス協議会とUniversiti Sains Malaysia、広島大学との共同開催によりマレーシアのPenangが開催地となった。したがって、主催国の日本だけでなく、マレーシアを中心に地理的に近いタイ、インド、インドネシアなど東南アジア近隣の国からの参加が目立った。これらの国ではパーム油の製造がさかんであるため、パーム果実の皮やパームの幹などをバイオマス資源とした、液体燃料やガス化、再資源化などの研究発表が多くあった。
バイオマスガスを熱分解し、水蒸気分解および、吸着剤を用いた2段型のPSA (pressure swing absorption) により精製したガスを想定し、高密度貯蔵と微量不純物の除去を一回のプロセスで可能な水素吸蔵合金によるシステムを提案した。本プロセスで貯蔵した水素は将来的には燃料電池への利用を予定しており、バイオマスガスの利用促進が期待される。本研究ではまず始めにPSAから出力される水素の主成分であるメタンが水素吸蔵合金へ及ぼす影響を調べた。具体的にはメタンの混合率を変化させ、水素吸蔵合金への被毒や分圧低下に起因する水素吸収性能の低下を測定し、同様の測定を二酸化炭素でも行った。実験結果よりメタンは使用した水素吸蔵合金 (LmNi4.55Mn0.12Al0.15Pd0.18) への被毒は極めて少なく、水素の吸収性能の低下はほぼ分圧の低下に依ることが分かった。さらにPSAから出力されるガスを模擬した水素 (97%) とメタン (3%) の混合ガス吸収時のオフガス流量を調整した際の水素の吸収量および不純物低減率を測定した。実験条件は実際のプロセスを考慮し、ガス圧0.4MPa、温度30℃で行い、流入するガス流量は300sccmとした。オフガス流量はメタンの混合率の3%に合わせた9sccmおよび、その半分の量である4.5sccmで行った。一旦ガスを吸収させたのち、水素吸蔵合金容器内のガスを放出しながらガスクロマトグラフィーを用いてガス組成を測定したところメタン濃度を100ppm以下に低減することができることが分かった。
Study on Metal Hydride Performance in Purification and Storage of Bio-H2という題目でポスター発表を行った。会議の性質上バイオマスそのものの評価や精製の研究が多い中、ガス化により生成した水素の浄化に注目した分野外の内容であることもあり、目立ったためか、比較的多くの方からコメントをいただいた。特に水素吸蔵合金への被毒の影響や水素吸蔵合金そのもののコストに関する質問が多く、今後の研究のために大いに参考になった。今回、共同研究を行っている別のグループからも発表があり、チームを組んで発表を行っていることに対するアピールができたことも一つの収穫であると考えている。いただいたコメントの中には本技術の応用技術に関するものもあった。水素吸蔵合金は高圧水素タンクや液化水素よりも重量があるため自動車のような大きなエネルギーを必要とするものよりもむしろ携帯情報機器などの小型化が求められるような用途への応用が期待されるため、関連するアイディアをいただいた。国際交流の観点からはマレーシア、インドネシア、タイといった親日国の参加者がほとんどであり、研究以外にも双方の文化や大学についての話ができた。また、キーノートセッションを務めたMohd Ali Hassan教授はパームヤシに関するバイオマス資源の研究に対する熱意が強く、研究内容だけでなく研究に対する取り組み方についても大いに勉強になった。