国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
石津 光太郎
(東京大学 大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻)
会議名
Association for Research in Otolaryngology - 40th Annual Mid-Winter Meeting
期日
2017年2月11日~15日
開催地
アメリカ合衆国、ボルチモア

1. 国際会議の概要

Association for Research in Otolaryngologyは耳鼻咽頭学、聴覚の国際会議としては世界最大規模で、耳鼻科医や聴覚研究者が各国から一同に会します。会場はまさに聴覚研究の博覧会といった体をなしており、聴覚に関係する研究であれば分子レベルから細胞レベル、器官レベル、臨床や心理実験に至るまで様々な規模での研究が揃い、各分野で活発な議論が行われます。

今回の2017 Association for Research in OtolaryngologyはBaltimore, Maryland, USAで2/11 ~ 2/15の日程で開催されました。今回は1,600を超える発表の申し込みがあり、合計72に及ぶセッション毎に、活発かつハイレベルな議論が展開されました。

次回の2018 Association for Research in Otolaryngology は San Diego, California, USAで開催される予定です。

2. 研究テーマと討論内容

視床と感覚野の相互作用は知覚生成に大きく寄与しています。たとえば聴覚では、視床の内側膝状体から大脳皮質の聴覚野へ向かうボトムアップの経路と、聴覚野から視床へと向かうトップダウンな経路が知られています。

今回発表した研究テーマでは、両領域の情報のやり取りに注目することで知覚の1次情報がどのように生成されて高次の領域に伝達されているか、そのパターン等を明らかにすることを目的としました。具体的にはまず、当研究グループで開発した「視床および聴覚野の同時電気生理計測系」を用いて、麻酔下のラットに音刺激を提示した際の聴覚野、視床の活動電位を計測しました。その後Transfer Entropy解析により、両領域間の情報伝達がどのように行われているかについて調べました。

その結果、ボトムアップの情報伝達のピーク時刻は10 ms、トップダウンの情報伝達のピーク時刻は15 msに認められました。さらに、トップダウンの情報伝達は、刺激開始後35 msにも極大値を示しました。また、ボトムアップの情報伝達はIV層とVI層で大きく、トップダウンの情報伝達は、これらの層に加え、V層でも大きいことが分かりました。これらの結果は、視床と皮質の解剖学的な投射の特徴に合致しており、本解析手法の妥当性を裏付けていると考えられます。

≪Poster presentation≫
以上の点を、より詳細な実験結果と合わせて、視床と1次聴覚野との関係を調査するセッションにてポスター発表を行いました。その結果、同様な研究テーマを専門にする方々と、活発な議論を行うことができました。

     

Poster presentation

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

上記の内容での講演を行った結果、同分野の方々から詳しい御指摘をいただけ、自身の研究を次のステップに進めるような質問やアイデアをいただくことができました。このような指摘は、研究をより幅広い視点で発展させていく上で極めて重要な成果でありました。また、著名な研究者の方々の講演を実際に公聴できたことで、自分の研究分野を取り巻くリアルタイムな動向を肌で感ずることができたことは、国内会議では得難い機会でした。
加えて、学会の終了後に聴覚研究で著名なUniversity of PennsylvaniaのYale E. Cohenの研究室を訪問見学し、活発なディスカッションを行えました。
自分と同じ分野で、同じ方向性を持ち研究を進める方々と直に話せたことは、これからの研究の方向性・モチベーションを高める最高の機会でありました。

最後になりましたが、本学会への参加にあたり、多大なる御支援を賜りました貴財団に心より感謝申し上げます。

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