国際会議 Optics & Photonics Taiwan, International Conference (OPTIC 2016) は、光学およびフォトニクス分野において台湾で最大規模の国際会議である。毎年、光学およびフォトニクス分野の第一線の専門家が集まり、最先端の研究成果発表と議論が行われる。本年のOPTIC 2016には約1,100人が参加し、口頭発表が247件、ポスター発表が434件発表された。台湾からの参加者が多いものの、日本や韓国、アメリカなど18ヵ国からの参加が見られた。会場は台湾北部の台北市にある国立台湾科技大学であった。台湾科技大学は、台北市の中心街のやや南部にキャンパスがある。
会場外観
基調講演の様子
ポリマサブミクロンファイバは、ポリマ材料からなる直径が1 µm未満の繊維状物質であり、極小、軽量、機械的に柔軟といった、シリカ等の無機系ファイバにはないユニークな特徴を有する。加えて同ファイバは、極小の円筒構造を有していることから極小の光導波路として機能することが期待される。これまでに、生分解性を示し、かつ再生可能な植物由来のポリ乳酸をエレクトロスピニング (ES) 法を用いてサブミクロンファイバ化したところ、同ファイバが光導波性を示すことを明らかにしている。さらに最近では、使用したポリ乳酸が非晶性であるにも関わらず、圧電的挙動を発現することを発見した。OPTIC 2016では、この電圧印加により機械的に可動なポリマサブミクロン光ファイバの形状と光導波特性にフォーカスして詳細に発表した。始めに、非晶性ポリ乳酸のサブミクロンファイバ単糸を作製し、直径を120 µmの区間で連続して測定した。この結果、平均直径が約300 nmの比較的均一なファイバが作製されていることを明らかにした。さらに、導波光の損失係数(伝播損失)を評価したところ、波長620-650 nmにおいて10 cm-1未満であり、ES法で作製したファイバの中で最低レベルの損失であることを明らかにした。最後に、導波光パワーのファイバ内部への閉込め係数を解析的に求めたところ、導波光の大部分がエバネッセント波としてファイバの外側を導波していることが明らかになった。発表では、サブミクロンファイバ内での光導波特性に関する討論やファイバの応用展開先について討論でき、新たな発見や知見を得る有意義な討論となった。
ポスター発表会場の一部の様子
本国際会議を通して、第一線の光学およびフォトニクス分野の専門家と討論することにより、研究の改善点や新しい研究の方向性の糸口が得られ大変有意義であった。加えて、関連する分野の最先端の研究動向調査により、研究動向のアップデートや新しいアイデアを着想することができた。また、台湾の国立大学の研究者の方とサブミクロンファイバの材料や応用展開に関して深い議論ができ、双方の研究交流について話ができたことは収穫であった。
感想としては、国際会議であるため発表言語と口頭発表に対する討論はほぼ英語であったものの、ポスター会場などでの討論は現地の言語を多く耳にした。しかし、英語で質問をすれば英語で討論することが可能であった。また、台湾は温暖なイメージであったが、本国際会議が開催された12月の初旬は、日本の晩秋程の寒さであった。
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださった丸文財団に厚く御礼を申し上げます。