国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
井上 飛鳥
(神戸大学 大学院工学研究科)
会議名
2016 MRS Spring Meeting & Exhibit
期日
2016年3月28日~4月1日
開催地
Phoenix Convention Center, Phoenix, Arizona, United States

1. 国際会議の概要

phoenix convention center

本国際会議はMaterials Research Society (会員数約16,000人)によって開催される、大規模な材料会議の一つです。本国際会議は毎年春と秋にアメリカ合衆国内で開催されており、国の研究機関や大学の研究所の幅広い分野の研究者が多く参加しています。また、国内外の企業がスポンサーとして多数参加しており、大型の実験装置から論文誌の紹介に至るまで展示会場で広報活動を行っています。今春の会議は63のシンポジウムセッションにわかれ、口頭・ポスター発表が5日間にわたり開催され、盛んな議論が繰り広げられていました。

私はSymposium NT8: Silicon Nanostructures-Doping, Interface Effects and Sensingにポスター発表という形で参加しました。このシンポジウムでは、世界各国のシリコンナノ粒子、ナノワイヤに関するトップレベルの研究者が集まり、意見交換や最近の研究動向について議論をしていました。

2. 研究テーマと討論内容

私は、”Surface Plasmon Enhanced Absorption Cross-Section of Silicon Quantum Dots in Gold Nanopartice Composites”という研究テーマでポスターセッションに参加しました。

近年、半導体量子ドットが溶液中に均一に分散した半導体量子ドットコロイド状溶液は、既存の蛍光体(有機色素、蛍光たんぱく質など)に比べ、高い光安定性や幅広く制御可能な発光波長から注目を集めています。しかし、研究が進んでいる多くの半導体量子ドットはCdSe,CdTeなどであり有害な重金属元素を含むため、研究段階に留まっており、実用化が厳しいと考えられています。シリコン量子ドットは生体親和性や環境親和性が非常に高く、また幅広い波長領域で発光を示すために重金属元素を含まない新たな材料として注目を集めています。しかしながら、シリコンは間接遷移型半導体であるため、生体の透過率が非常に高い領域(700-1000 nm)において光吸収断面積が小さく、発光再結合レートが低いという課題があります。

そこで本研究では、金ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴に伴う増強電場を用いて、シリコン量子ドットの特性の改善を試みました。シリコン量子ドットと金ナノ粒子を3つの異なるプロセスを用いて複合させ、さまざまな形の非常に制御性の高い金ナノ粒子/シリコン量子ドットの複合体を作製しました。金ナノ粒子/シリコン量子ドット複合体の作製プロセスは過去に報告が少ないことから、ポスター会場において沢山の質問を受けることができました。また、この研究内容はプラズモニクスとシリコン量子ドット2つの分野を融合させたものであり、本会議において幅広い分野の研究者と討論をすることができました。また、本会議で発表したポスターはMRSのBest Poster AwardのNomineeに選ばれることができました。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

phoenix

本会議に参加し、多岐にわたる分野の研究発表を聞くことができ、また同時にその中で自らの研究発表ができたことは、非常に有意義な経験でした。また招待講演では、いつも参考にしている論文の有名な先生方の発表を受け、感銘を受けました。ポスター発表ということもあり、2時間にわたりポスター会場で多数の研究者と意見交換を行えたことは、価値のある経験だったと思います。

また、本会議が開催された都市がフェニックスという砂漠の中の都市であり、その都市の中に数千人の研究者が集うことで、5日間どこにいてもMRS参加者に出会うという環境が非常に珍しく、日本では絶対にできない経験であったと思います。

最後に、これらの素晴らしい体験をするにあたり、多大なるご支援をいただきました丸文財団様に深く感謝申し上げます。

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