会場(ARIA RESORT & CASINO)
本会議55th IEEE Conference on Decision and Control は、2016年12月12日から12月14日にかけて、米国・ネバダ州のARIA RESORT & CASINO にて開催された。本会議では、制御分野における理論から応用までの最先端の研究成果が毎年報告されており、IEEE Control Systems Society (CSS) が主催する世界最大規模の国際会議である。実際に世界各国からの注目度は高く、総論文投稿数は2,086件に上り(そのうち1,242件の論文が採択されている)、連日23ものセッションが同時に進行され、6件のチュートリアル講演、18件のワークショップが開かれた。基調講演とプレナリー講演にはRichard M. Murray、Andrew G. Alleyne、Christos G. Cassandras、Angelia Nedich、Pierre Rouchonら5名が登壇され、盛況を博していた。
来年はオーストラリア・メルボルンにて開催予定である。
本会議では、「Consensus by maximum hands-off distributed control with sampled-data state observation」というタイトルで、マルチエージェントシステムにおける合意制御問題について発表した。合意制御問題では、各エージェントがそれぞれ幾つかのエージェントとのみ情報交換が許される状況を想定し、各々の状態などを共通の値に収束させる制御則についての考察が行われる。エージェント間の情報伝達には通信路を用いるために通信容量制約の考慮が必要であり、またエージェントに搭載されているアクチュエータには性能上の制約が課せられる。
そこで本研究では、エージェント間の情報伝達は周期的に行われるものとし、制御入力値には凸制約が課せられているものとする。さらに、制御入力を評価するためのコスト関数としてL0ノルムを採用する。L0ノルムとは、制御入力が零値をどの程度取るかを表す指標であり、スパース性の評価に用いられる。スパース性が高いほど、システムはアクチュエータを長時間休止させることができる。この性質は例えば、安価な動力源しか搭載できないUAVやUGVにおいて連続駆動時間の延長の観点から有益である。本発表では、動的なエージェントを対象とし、上記の拘束を満たしつつ、各エージェントに対する制御入力のスパース性を促進させるような合意制御アルゴリズムを提案した。
近年盛んに議論されているマルチエージェントシステムの制御に関する発表をこのような大規模な国際会議で披露することができたことは、大変有意義なことであったと思う。帰国後も、私たちの論文を読んで電子メールを介して意見交換をしてくださる方もいて、今回の発表により他分野の研究者と繋がる機会を得ることができた。
自らの研究成果を発信するだけではなく、世界的に著名な研究者の研究発表や基調講演、プレナリー講演を聴講することができ、近年の研究動向やその背景を知ることもできた。今回得た経験や知識は今後の研究活動に大いに活用したい。
最後に、本会議への参加に対してご援助をいただいた貴財団に深く感謝し、御礼申し上げます。
基調講演の様子
ラスベガスの街並み