国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
市井 智章
(京都大学 大学院理学研究科)
会議名
41st International Conference on Infrared, Millimeter and Terahertz Waves (IRMMW-THz 2016)
期日
2016年9月25日~30日
開催地
コペンハーゲン、デンマーク

1. 国際会議の概要

会場となったBella Center

本会議はConference on Infrared and Millimeter WavesとInternational Conference on Terahertz Electronicsの合同会議である。今年はデンマークの首都コペンハーゲンで開催されたが、昨年は香港、来年はメキシコといったようにアジア、ヨーロッパ、北アメリカの各都市を巡回して毎年行われている。

本会議は赤外、ミリ波及びテラヘルツ領域の電磁波に関する世界最大級の国際会議であり、今年は世界106か国から参加者が集い、約320件の最新の研究成果が報告された。内容としては新規な光源・検出・イメージングの開発や、それらの手法を用いた半導体・液体などの物性研究、さらにレーザーを用いた重力波検出というように実に様々な分野での研究結果が発表され、活発な議論が行われた。

2. 研究テーマと討論内容

“Infrared Spectroscopy Of Water Molecules In Porous Coordination Polymer”というタイトルでポスター発表を行った。Porous Coordination Polymer (PCP)とは、規則的なナノ細孔を有する結晶性吸着物質で、従来の吸着物質とは異なり特定のガス分子を選択的に吸着することができ、分子やイオンの分離、輸送、分子センサーなど、幅広くその応用が期待されている。しかし、応用に直結するような研究が多く行なわれている一方、選択的吸着などのPCPの特異な性質がどのようなメカニズムで起こっているのか、あるいは吸着された分子はどのような状態にあるかというような基礎的な研究は盛んに行なわれていない。PCPを用いた技術的発展のためには、PCP細孔内部における分子の状態や吸着メカニズムの解明が必要不可欠である。我々は、水を吸着するPCPに着目し、その水分子の吸着状態と吸着メカニズムの解明に取り組んでいる。実験手法としては水の状態を議論するのに有力な手法とされる赤外分光法を用いて研究を行っている。

本発表では、水の同位体である重水(D2O)を用いることで、水の吸着状態や吸着過程を明らかにしている。同位体を用いた本実験手法と研究結果は多くの聴衆者の方に理解を得ることができたと感じた。同時にプロトンのホッピングが吸着速度に対しどれくらいの速さで起こるかという水特有の性質に関し有意義な議論を行い、今後の課題を認識した。PCPの具体的応用例に関する質問もあり、PCPという応用化学で注目されている物質を物理の学会で広める発表もできた。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

コペンハーゲンの中心部にある
クリスチャンスボー城

本会議に参加し、多くの博士課程の学生と知り合い交流できたことは非常に貴重な経験となった。また現在世界的に競争の激しい研究テーマで最先端の研究成果を出している同期の学生とも知り合うことができ、立派に発表している姿を見て大変刺激になった。国際交流としては学会期間中、海外の学生と何度か夕食を共にすることができた。研究内容だけでなく私生活の話や冗談を言い合いながら非常に楽しい時間を過ごすことができたが、途中自身の英語力が不足していたため、会話が途切れてしまうことがあった。ポスター発表中でも、英語で相手の質問に対し正確に答える難しさを感じた。今後、よりスムーズな会話や議論ができるよう、研究だけでなく英語力の向上にも取り組みたいとモチベーションに繋がった。本国際学会を通じて、今回このように貴重な経験をさせていただきました。本学会に参加するにあたり、丸文財団からは多大なるご支援をいただきました。最後になりますが、心より感謝申し上げます。

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