Hynes Convention Center
MRS Fall Meetingは、Materials Research society (MRS) によって開催される、材料学の分野において世界最大規模の学会です。フォトニクス、エレクトロニクス、バイオテクノロジー等幅広い分野を対象とする本会議には、毎年様々な国や大学の研究機関から6,000人を超える参加者が集まります。また、それらハイレベルな研究者が多数集まることに注目し、世界各国から200以上の企業が集まり、実験装置や論文誌に関する展示を行っています。
今回の2016 MRS Fall Meetingでは、合計54のシンポジウムに分かれ、それぞれのシンポジウムで口頭発表およびポスター発表が行われました。口頭発表では各分野をリードする研究者がそれぞれのセッションに集い、連日ハイレベルで、活発な議論が繰り広げられました。また、多岐にわたる分野の研究者が集まるため、分野を跨いだ意見交換も見られました。ポスター発表では、ホールに各日400~600件ものポスターが掲示され、夜8時から10時まで、軽食とビール、ワイン片手に、和やかな雰囲気の中でありながら、ハイレベルな議論が行われました。
本発表では“Surface Plasmon-Enhanced Upconversion in Rare-Earth Doped Nanoparticles with Au Nanocaps”というタイトルで、口頭発表を行いました。以下にその概要を示します。
中間準位を介して低エネルギーフォトンを高エネルギーフォトンに変換するアップコンバージョン (UC) 現象は、3DディスプレイやUCレーザー、太陽電池の波長変換層への応用が期待されています。本研究では、金属ナノ構造と希土類ドープUC材料からなる新しいタイプの複合ナノ粒子を実現し、局在表面プラズモン共鳴によるアップコンバージョン増強を実現します。
発表の様子
我々は複合ナノ粒子として、UCナノ粒子の一部を金属シェル(ナノキャップ)で覆う構造を提案しています。金属ナノキャップ構造は、キャップのリム近傍に高い増強電場が発生するため、UCナノ粒子の励起効率及び発光効率の大幅な増強が期待できます。本研究の独創的なポイントは、ナノキャップの被覆率を制御し、それにより表面プラズモン共鳴波長を可視から近赤外領域まで広く制御することに成功したことにあります。これにより、表面プラズモン共鳴波長をUC粒子の励起波長及び発光波長にチューニングすることが可能となります。さらに、本研究では、単一の複合ナノ粒子について、散乱スペクトルと発光スペクトルの測定を行い、得られた結果と電磁界シミュレーション結果を比較することにより、UC増強のメカニズムを明らかにしました。
今回、本会議でも注目の高いセッションで発表したため、200人を収容できる大きなホールでの発表となり、多くの研究者に自身の研究をアピールすることができました。発表後には、海外のハイレベルなグループの研究者の方から質問をいただき、その後数十分にわたって別室で議論するなど、貴重な経験に繋がりました。
本会議を通して、世界中の研究者と意見交換を行い、自らの研究に関する新たな知見を得ることができました。それに加えて、世界の研究をリードする方々の招待講演を聴講し、自身の分野に留まらず、様々な分野においてトップレベルの研究動向を知ることができたのは、このような大規模な会議だからこそだと思います。
また、英語コミュニケーション能力不足など、新たな課題も見つかり、今後の研究のモチベーションも高まっています。私にとって初の国際会議への参加によって、国内の会議にはない様々な刺激があり、貴重な経験となりました。
本学会への参加に際して、多大なるご支援を賜りました貴財団に心から感謝申し上げます。