会場の様子
会場のホテル
2016 VLSI-DATは、台湾の中核都市である新竹市で開催されました。本学会は、集積回路に関する設計、テスト技術等を発表するものです。同会場で、The 2016 International Symposium on VLSI Technology, Systems and Applications (2016 VLSI-TSA) も開催されていました。正式なアナウンスはありませんでしたが、400-500人程度の参加者だったと思われます。
新竹市は、IT関連の工場や企業が集中しているため、「台湾のシリコンバレー」と呼ばれており、世界でトップクラスの半導体メーカーであるTSMC (Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.) やUMC (United Microelectronics Corporation) の拠点の地です。そのような地で開催された事もあり、現地の半導体関係の技術者、研究者、大学生が聴講に訪れており、現地で大変注目されている学会だという印象を受けました。
プレゼンテーションの様子
私の研究テーマは、古典数学の一種である魔方陣を用いたDA (Digital-to-Analog) 変換器の線形性向上アルゴリズムの検討です。本学会では、“DAC (Digital-to-Analog Converter) Linearity Improvement Algorithm With Unit Cell Sorting Based on Magic Square”と言う題目で、口頭発表(発表:18分,質疑応答:2分)を行いました。
議論内容は、古典数学の魔方陣を応用したDA変換器の新規線形性向上アルゴリズムを検討した事です。DA変換器を構成している電流源は、製造工程の上で電流源の特性にバラつきが生じるため、入出力特性が非線形となってしまう問題があります。私は、魔方陣の性質である定和性質を、電流源の選択順序に応用する事で線形性向上を図りました。本学会で、DA変換器に魔方陣を用いたアルゴリズムの有効性を、シミュレーション上で証明したものを発表しました。
本学会は、研究機関だけでなく産業界からも注目されていた事もあり、研究成果をアピールする場として大変有意義な時間であったと思います。研究の根源は、未来の社会のためにあると、改めて実感しました。
口頭発表では、念入りに準備していったため、私の研究アプローチ方法と成果を的確に伝えることができたと思います。しかし、質疑応答の際には、数件の質問をいただけたのにも関わらず、英語でのコミュニケーション能力不足のため、回答することができませんでした。技術者・研究者は、一般的なコミュニケーション能力の他に、専門内容のコミュニケーションを取れる能力も必要だと、痛感しました。しかし、学生時代にこの様な場を経験できた事は、私の将来にとって大きな糧となると思います。この経験を活かして、研究活動と自己研磨に大いに役立てていきたいと考えています。
研究室関係者との集合写真
また、学会最終日には、台湾の半導体産業地域と大学へ見学に行きました。台湾の現在に至るまでの産業成長を説明していただきました。そこでの印象は、“国”・“産業”・“大学”の3つが強く連携して、産業の発展に繋げていると感じました。今では世界トップの半導体メーカーを有する国となっていますが、それに満足せずに次のステージに向けて取り組む姿勢も感じられました。今後の産業で求められているものは何なのか。改めて考える時間となり、学術的なものだけでなく、産業教育と言う面でも、大変有意義な時間となったと思います。将来は、教育機関にフィードバックできるような技術者となりたいと思いました。
最後に、このような実りのある国際学会への出席にご支援をいただいた丸文財団の皆様に深く感謝を申し上げます。