国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成28年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
橋本 秀明
(東京都市大学 総合研究所 ナノエレクトロニクス研究センター)
会議名
PRiME 2016/230th ECS Meeting
期日
2016年10月2日~7日
開催地
Honolulu, Hawaii

1. 国際会議の概要

国際会議PRiME 2016/230th ECS Meetingは1902年から、春と秋で毎年2回開催されており、今年はハワイ、ホノルルのHawaii Convention Center & Hilton Hawaiian Villageで230回目が開催された。開催期間は2016年10月2日から7日となっている。内容としては、主なセッションとは別にAward presentation、Poster session、Short coursesなども同時開催された。セッション数は14種類あり、例えばDielectric science and Materials、Electronic materials、Photonic devices、Luminescence and Display materials、Bioelectrochemistry、Sensorsなど多岐にわたる。特に参加したElectronic materialsのセッション内容は、SiGeやGeを主な材料としたものである。また、セッションによっては登壇前にProceedingsの投稿をすることも可能である。

次回の開催は、2017年5月28から6月2で開催地はLAのNew Orleansを予定している。

2. 研究テーマと討論内容

「Enhanced Light Emission from N-doped Ge Microdisks by Thermal Oxidation」

Siチップ上の光電子集積回路の実現に向け、発光源としてGeが注目されている。Si基板上にGeをエピタキシャル成長させることで、熱膨張率の違いからGeに引っ張り歪みが導入される。さらに、n型高濃度ドーピングと組み合わせることで直接遷移からの発光が増大する。光学的共振器を作製するためにリソグラフィとドライエッチングを用いるが、ドライエッチングにより生じる共振器表面・側面の欠陥は光学特性の妨げとなる。本研究では、Si上にエピタキシャル成長させたGeにn型ドーピングを行い、メサ構造 (マイクロディスク)を作製した。さらに、熱酸化による表面の不活性化を行うことで、発光強度の増大を達成した。約0.22 %の歪み率を持った、厚さ740 nmのGe層は2段階成長法を用いて分子線エピタキシー装置によってSi (100)基板上に成長した。このようにすることで、高温成長したGe層をより高品質なものとすることができる。さらに、Spin-on-Dopant (SOD)によってリンの拡散により高濃度のドーピングを行った。電子線描画装置と反応性イオンエッチングを用いて作製した直径1.6 µmのディスクに550 ℃の熱酸化による不活性化を行ったところ、約3.4倍の発光強度 (積分強度)増大を達成した。これは、表面再結合やエッチングによる欠陥の抑制によるものであることが示唆される。また、発光強度と酸化温度プロットを取ったところ、不活性化の効果を得るためには400 ℃以上が必要であることが確認された。これは、酸化膜厚がある以上必要であることを示している。熱酸化による不活性化で、非発光再結合を効果的に抑制することができ、発光デバイス作製に向けて有望であることが示された。

■ 討論内容

「Q1. Geの酸化膜は不安定な物質であることから、保護膜には何を用いたのか?」
「A1. 最近の我々の研究でドーピング無しの場合でも同様の実験を行ってきた。そのときはAl2O3を保護膜として堆積させた。ここで、Al2O3を保護膜として使用する場合、酸化温度は450 ℃以上必要であることが分かった。」

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

国際会議への参加は今回で2度目、国内会議にも多数参加してきたため発表の要領は掴めていた。国際会議の雰囲気は学生にとってはかなりの緊張感はあったが。質問については、持ち時間いっぱいになるまでなされた。事前に予想・準備してきたことも含め、すべての議論に対して、収束する方向に進めることができた。これは、発表についてのコミュニケーションは上手くいったと考えてよいと感じ、自信にもなった。自分の研究分野に直接関係する発表自体は少なかったが、現地に滞在している間で多くの件数の発表を聴講した。それぞれ、Proceedingsも投稿されているため今後の研究に参考にできる。しかし、他の発表についての自分からの質問はできなかったので、これに関しての国際交流は不十分であり、語学とともに勉強不足であったと実感した。逆にいえば、今後のグローバルに対応していく上で、前述したことも含め課題が明確になったことは、国際会議での収穫といえよう。やはり、自身の研究室に閉じこもっていると、研究分野の立ち位置や認知度を知ることはかなり難しい。そこで、成果を挙げ国際会議等に参加することでそれらも学ぶことができる。また、自分次第で新たな知見を得ることができることも実感した。

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