会場外観
第一回ISOENは、1994年、フランスのトゥールーズで、Alpha M.O.S.社がE-Noseとその周辺技術の発展を目的に「Olfaction & Electronic Nose symposium」として開催されました。1999年には論文評価や基調講演を行うために科学的な委員会が組織されています。2007年にはISOENがISOCSに統合されて以降、ヨーロッパ、アメリカ、アジアを中心に二年おきに開催されています。
そして、今回の16th International Society for Olfaction and Chemical Sensing (ISOEN2015)は、E-sensesや匂いの生成/伝達関係における唯一の国際会議として、フランスのディジョンで開催されました。
ポスター発表会場にて
私は「Region segmentation on odor source using multispectral fluorescence imaging」という題目でポスター発表を行いました。匂いが持つ情報には質、強さ、空間分布などがあります。従来のガスセンサでは匂いの質や強さを検出することはできますが、空間分布を検出することは困難です。これに対し、本研究では匂い可視化センサの開発を目標としています。蛍光物質と匂い物質間の相互作用により発生する蛍光変化を撮影することで、匂いの情報を画像という形で扱えるようになります。ここで、複数の蛍光物質を用い、マルチスペクトルイメージングを行うことで、一つの匂い物質に対して複数の蛍光変化が得られます。複数の蛍光変化の組み合わせは匂い物質の種類によって異なるため、これらの組み合わせを互いに比較することで匂い識別が可能となります。
今回の発表では12種類の匂い物質を対象に測定を行い、主成分分析を行った結果、匂い物質に対して発生する蛍光変化が匂い物質の化学構造に依存していることを示しました。また、3種類の匂い物質で作成した匂い源を可視化し、各匂い物質の蛍光変化を比較することで、匂い源を匂い物質の種類ごとに領域分割しました。
オーラル発表の様子
ISOENは匂いセンシング・ガスセンシングを中心とした国際学会であるため、必然的にセンシング技術やデータ解析による実用例などの発表が多く見受けられました。招待講演では20年間におけるガスセンサの発展に関する講演等があり、従来のガスセンサとその発展から最近のトレンドまで、幅広いお話を聞くことができました。全体としては、既存のガスセンサを用いた応用に関する研究が多く、ガスセンサ自体の開発に関しては一種の停滞状態にあるという印象を受けました。
本国際会議を通して、今後の研究の課題やヒントを多く得ることができ、ガスセンサ分野の現状を知ることができました。末筆ながら、今回の国際会議への参加にあたり、多くの支援をいただいた事を心より感謝いたします。