国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成27年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
瀬戸浦 健仁
(大阪大学 大学院基礎工学研究科 物質創成専攻)
会議名
250th American Chemical Society National Meeting
期日
2015年8月16日~20日
開催地
The Boston Convention and Exhibition Center, Boston, MA, the U.S.A

1. 国際会議の概要

American Chemical Society National Meetingは、世界最大の科学系学術団体であるAmerican Chemical Society (ACS)の1年に2度開催されるアメリカ全国会議であり、アメリカ国内外から約15,000人の参加者を集める。討論領域は、有機・無機・物理化学を始めとして化学全般に亘り、各分野の最新の研究成果が報告される。物理化学のセッションでは、新規分光法の開発とその応用等について、まさにACSトップジャーナルの最新号に掲載されている成果を聴くことができた。
次回の251st ACS National Meetingは、2016年3月13-17日にカリフォルニア州サンディエゴで開催される。

会場_外観

会場_受付

2. 研究テーマと討論内容

講演題目“ Light Induced Temperature Increase of Gold Nanoparticles: Single and Ensemble Particle Measurements”でポスター発表を行った。

近年、高効率な太陽電池および光触媒の開発のために、貴金属ナノ粒子・ナノ構造の表面における光アンテナ効果の利用が盛んに研究されている。このアンテナ効果は、局在プラズモン共鳴と呼ばれる電気分極の共鳴振動であり、可視光の入射光電場強度を局所的に106倍まで増強する。一方でナノ粒子に吸収された光エネルギーはその多くが最終的に熱に変換され急激な温度上昇を起こし、吸着分子の熱分解または剥離、ナノ粒子自体の熱的な破壊に至る場合もある。

ポスター発表

講演では、光励起された貴金属ナノ粒子の光熱変換過程および最終的な温度上昇を測定する手法開発を含めた研究について発表した。ナノ粒子の典型的な直径は10 - 100 nmであり、回折限界のために通常の光学的な手法でその温度を評価することは困難であった。我々は局在プラズモン共鳴の温度効果について数値解析モデルを構築し、分光計測でモデルを実証することで、ナノ粒子温度の直接計測を単一粒子レベルで達成した。この温度測定モデルを超高速時間分解分光実験に適用することで、超短パルスレーザーでナノ粒子を加熱した際の、ピコ秒の時間領域での過渡的な温度変化を評価し、加えて溶媒の過熱によってナノバブルが生成することを明らかにした。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

ACS National Meetingで報告される研究内容は世界の化学系研究のトレンドを反映しているため、その中での自分の研究の位置づけ・今後の発展性について考えるヒントが得られた。また今回の会場は、理工系のトップ大学であるMassachusetts Institute of Technology (MIT) からほど近く、多くの博士課程学生とポスドクが講演しており、彼らのハイレベルな研究に刺激を受けた。

ポスター発表では、聴きに来ていただいた方々に「手短に・簡潔に説明してくれ」と言われることが多かった。3分程度の限られた時間で自分の研究を上手くまとめ、意義と面白さを伝えるのはプレゼンテーションの良い訓練になった。同分野のみならず異分野の研究者とも議論し、多くのポジティブなコメントをいただき、今後の研究の励みとなった。

最後に、このような貴重な機会を与えていただきました一般財団法人丸文財団に心より感謝申し上げます。

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