PACIFICHEM 2015は、アメリカ化学会(ACS)、カナダ化学会(CSC)、日本化学会(CSJ)、ニュージーランド化学協会(NZIC)、オーストラリア王立化学協会(RACI)、韓国化学会(KCS)、中国化学会(CCS)の7学協会の主催による世界最大の化学分野の国際会議である。PACIFICHEM (http://www.pacifichem.org/) は、1984年の創設以来5年に1回のペースで常に米国ハワイ州ホノルル市において開催されてきた。PACIFICHEM 2015は、これまで成功を収めてきたPACIFICHEM会議の第7回目となる。PACIFICHEM 2015の目標は、全人類の生活の質の向上のために、環太平洋地域の化学者の間で共同研究を促進することであり、様々な最新の研究成果にスポットを当て、345にのぼるシンポジウムが企画された。
金属ナノ粒子は局在表面プラズモン共鳴(LSPR)という特殊な光学的性質を持ち、蛍光色素に替わるバイオイメージングプローブとして期待されている。一方磁性ナノ粒子は、タンパク、細胞、細胞内小胞などの生体物質の選択的な磁気分離のためのツールとして期待されている。これら2つの性質を併せ持つ磁性-プラズモン複合ナノ粒子は、次世代のバイオプローブとして大きな可能性を秘めている。
申請者は、新奇な三元系合金であるAuFePtナノ粒子を改良ポリオール法によって化学合成することに成功した。このAuFePt合金ナノ粒子は、超常磁性とLSPR特性を併せ持つ。AuFePtナノ粒子の表面をポリ-L-リジンで修飾することで、水溶性かつ生体分子親和性を持たせることにも成功している。また、通常AuPt合金ナノ粒子ではPtがLSPR特性を可視光領域に持たずAuのLSPRは大きく減衰することが知られているが、Feを添加したAuFePtナノ粒子ではLSPRの減衰が抑制され、AuのLSPRピークが明確に観測される理由を、Mie散乱計算から明らかにした。
本講演では、Au65FexPt35-xナノ粒子の磁気特性とLSPR特性を、Feの含有量(x)を変化させて系統的に調べ、Mie散乱シミュレーションとの比較を行って、Feが磁性およびLSPR特性に及ぼす影響を検討した結果について発表した。
AuFePt合金ナノ粒子において、なぜ原子レベルでFePt結晶格子内に分散しているはずのAu原子から、プラズモン散乱が検出されるのかということについて、金属ナノ粒子の局所表面プラズモン共鳴が専門の世界的研究者らと深く議論することができ、今後の研究について非常に有意義な指針を得ることができた。
また、他の研究者の発表においても、興味深い最新の研究成果を数多く聴講することができ、極めて有意義な時間を過ごすことができた。毎日のように開催された巨大なポスターセッションでは、世界各国の若手研究者らと交流を深めることができた。これが私の人生において最初で最後のハワイ渡航体験になるかもしれませんが、大変楽しく貴重な体験をさせていただき、この場をお借りして、渡航旅費を助成していただいた丸文財団に御礼申し上げます。