学会会場付近のリヨンの街並み
12th EUropean Conference on Applied Superconductivity (EUCAS 2015) は超伝導の応用研究を対象とした学会である。本会議はフランスのリヨンで、9月6日から9月10日まで開催された。ナノスケールの材料物性から、大型加速器用の超伝導コイルなどの大きなスケールまで、超伝導に関するあらゆる応用研究が発表された。EUCASは2年ごとに開催され、次回の13th EUropean Conference on Applied Superconductivity (EUCAS 2017) はスイスのジュネーブで行われる。
ポスター発表の様子
低コストなREBa2Cu3Oy(RE123)超伝導線材の作製プロセスの実現に向けて、合成温度の低温化が必要とされている。我々はKOHを溶媒に用いるKOH flux法により、従来の主な合成手法より低い温度(500~700oC・窒素雰囲気中)でRE123の合成に成功した。KOHフラックス法では、希土類のイオン半径がGdよりも大きくなるに従って、Tcが低下し、c軸長が短くなった。RE123系は、REイオンがBaサイトへ固溶するRE/Ba置換によりTcが低くなり、c軸長が化学量論組成のRE123相より短くなることが知られている。また、還元雰囲気下で合成することにより、RE/Ba置換は抑制されることが報告されている。我々が合成したRE123相のTc低下の原因はRE/Ba置換であると考えられる。Gd以上のイオン半径を持つRE123はY123よりも高いTcを示すことが報告されており、高TcのRE123を得るために、KOHフラックス法における酸素分圧とRE/Ba置換量の関係を知る必要がある。以上の背景より、KOH flux法において、酸素分圧によりRE/Ba置換の制御が可能か明らかにすることを目的とした。
結果として比較的イオン半径の小さいGd, Sm, Euで低酸素分圧・高温のほうがRE/Ba置換が抑制されていることが分かった。また比較的イオン半径の大きいNd, Laでは酸素分圧が大気に近いほどRE123結晶そのものが生成されにくくなっていた。La123の合成は難しく、この手法におけるLa123の合成可否について多くの研究者が興味を示してくれた。
学会会場(Lyon convention center)
ポスターセッションが他の発表とかぶっていたり、会場が分散していたりということがなかったので、議論に集中できるプログラムになっていたのがよかった。時間も十分に確保され、多くの発表を見たり、発表に対して質問したりすることができた。また、大型加速器への応用など非常に大きなスケールでの発表は国内ではなかなか聞く機会がなく、今後の研究の目指すべき方針を考えるうえで大変勉強になった。英語での発表および質問は、難しいと感じる部分もあったが、メイントピックとなる部分を丁寧にかつ簡易な表現で示す発表が多く、今後の自分の学会発表などで使えるコミュニケーションを学ぶことができた。
また本会議ではバンケットが設けられており、そこで他国の学生と交流することもできた。
最後になりましたが、本会議への参加にあたり、多大なるご支援をいただきました貴財団に心より感謝申し上げます。