North American Conference on Molecular Beam Epitaxy (NAMBE 2015)は、今回メキシコを開催地として、世界各地域の分子線エピタキシー法を用いた研究者が一同に会する国際会議である。本会議は今年で第31回目の開催となり、今回はIBEROSTAR Paraiso Beachホテルを会場としておよそ130名の研究者が参加された。本会議ではMBE法を用いた技術,新材料の合成、材料の成長,デバイスの開発の進歩に携わる研究者の科学技術交流を目的とした由緒ある会議である。本会議では、研究技術のアプリケーションを介して、高容量かつ低コスト生産へ向けた基礎および応用の分野で最新の研究成果報告を下に活発な討論が行われた。
会期中は、会場近くのビーチにおいて歓迎会や晩餐会が開催され、会議に参加した研究者たちが親睦を深めた。また、最終日には若手研究者を対象とした若手研究賞および最優秀学生論文賞などの研究奨励賞を提供しており、次世代を担う若手研究者の育成に資した。
本会議では“Comprehensive study on inductively coupled plasma reactive ion etching of GaN and InN”という題目でポスター発表を行った。
InNは2002年にBand gapが約0.6 eV と従来の報告値よりもはるかに低いことが明らかになり、In系窒化物半導体(GaInNなど)は近紫外~赤外までをカバーできる次世代光デバイス材料として期待され、現在でも盛んに研究されている。
これまで、本グループは分子線エピタキシー(MBE)法を用いて表面平坦性に優れた高品質InN成長技術を確立し、この技術をGaInN成長に応用した全組成領域での表面平坦性に優れたGaInN成長に成功した。この技術によりpn-GaInNホモ接合型青緑色LEDの製作に成功しており、長波長領域でのデバイス実現への兆しを見せている。しかしながら、これらのデバイスの実現には、InNや高In組成GaInNそのもののプロセス技術の確立は必須の課題であるが、結晶成長が困難ゆえに未だ長波長領域(赤~赤外)でのデバイスプロセス技術の発展も遅れていた。本研究ではデバイス製作上必須プロセスである誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチングにより、上記の高品質InNのエッチング特性を調べ、またこれまで多くの研究がなされてきたGaNのエッチング特性との比較からInNエッチングの問題点を明確にし、その解決手法の提案まで行った。
本会議では、ポスター発表を通して、自身の研究結果・考察に対する疑問点・将来展望などに関して様々な国の研究者の方と議論を行うことができ、研究だけでなく英語でのコミュニケーション力向上に繋がる良い刺激になったと感じている。また、多くの専門家の方との議論を通じて、自身の研究が世界でどのような位置づけにあるかを学ぶことができた。
本研究での結果は、幸いにも多くの方々から注目を受け、自身研究に対して非常に有意義かつ勉強になる機会であったと感じている。口頭発表では、他分野の発表も含め、他者の発表を拝聴することにより今後の研究活動に役立つコメントを数多くいただくことができた。今回滞在したカンクンは、美しく青い海や、温暖な気候に恵まれたリゾート地として知られており、学会会場であるホテルとビーチが隣接していたため、空き時間を利用して景色などを体感するなど、会議時間外も大変有意義に過ごすことができた。
最後に、本会議に出席するための渡航費の御援助をいただきました丸文財団様に、心から御礼申し上げます。