国際会議会場となった、ハンブルグ大学の講堂
ICAME 2015とは、原子核における無反跳で起こるγ線の共鳴吸収現象であるメスバウアー (Mössbauer) 効果テーマとした国際会議です。今回の国際会議には約350の研究者が集まり、70件の口頭発表と237件のポスター発表がありました。メスバウアー効果を用いて行われる測定には、放射線源からのγ線を試料に照射するオーソドックスな分光法をはじめ、測定試料から放射されるγ線を分光するインビーム・メスバウアー分光法、放射光施設で行われる放射光メスバウアー分光法などがあり、物性物理だけでなく化学や地球科学など様々な分野の発表がありました。今回のICAMEは9月13日から9月18日までの6日間で、ドイツのハンブルグで行われました。ハンブルグには放射光施設であるDESY (Deutches Elektronen-Synchrotron) があり、会議のプログラムの1つとしてDESYの見学をすることができました。
ポスター会場に設置されたポスター
(左にあるものが永澤のもの)
現在、重量比で生産量の大半を占めているフェライト磁石は、M型Srフェライト(SrFe12O19)です。SrFe12O19は、等価でない5つのFeサイトが存在し、それらのFeが磁気モーメントを持っているフェリ磁性体です。この物質について、SrをLaで、FeをCoで少量置換することで飽和磁化をあまり減少させることなく、保持力を上昇させることがわかっています。しかしながら、これまで多くの研究が行われてきているにも関わらずCoを置換することによってFeが受ける影響や、磁気異方性上昇などの原因については多くの課題を残しています。そこで、我々は純良な単結晶試料SrFe12O19母物質やLa-Co置換系試料を用いて57Feメスバウアー分光測定を行い、各Feサイトの電子状態と、La-Co置換することによって各Feサイトが受ける影響について調べています
本国際会議では、"Single-Crystalline M-type Sr Hexaferrite Studied by 57Fe Mössbauer Spectroscopy"というタイトルでポスター発表を行いました。発表内では置換によって起こる各Feサイトの無反跳分率についての異方性の変化や、La-Coを置換することで一部のFeサイトが大きく影響を受けることなどを議論しました。
今回のICAME 2015が、自分にとって初めて国外で参加した国際会議でした。海外での国際会議に出席できたことで、私自身英語が不得手であることを痛感しました。ICAMEは実験手法であるメスバウアー分光をテーマに行われる学会であるため、様々な分野を専攻している参加者と議論、会話をすることができました。専攻分野の知見を深めるばかりでなく、他分野についての知識を得ることができました。
DESYの見学ツアーでは、日本の大型放射光施設であるSPring-8との違いを見ることができ、非常に勉強になりました。滞在したハンブルグは日本より気温が低く、滞在したのは9月でしたが感覚的には日本(関西)の11月と同程度の気温でした。毎日スコールに降られ、現地の人によるとその雨の頻度は異常だそうです。
最後に、本会議の参加に対して惜しみないご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に深く感謝いたします。
ハンブルグ・倉庫街の風景