発表会場
The 22nd International Conference on Neural Information Processing (ICONIP 2015) は、第22回目の開催となるニューラルネットワーク情報処理国際会議であり、ニューラルネットワークや計算知能・学習システムやその応用などにおける最新技術を議論する国際会議です。トルコ、イスタンブールで2015年11月9日から12日まで行われた本会議は、この分野においては高いレベルの国際会議であり、採択率は62%、計231件の発表がありました。来年度は日本の京都で10月16日から21日まで行われる予定です。
発表会場
本会議では、「Path planning with slime molds: a biology-inspired approach」という題目で口頭発表を行いました。LSIや従来のコンピュータアーキテクチャーでは、ピクセル間やノード間が相互に影響し合う系の演算を苦手としています。そこで本研究では、粘菌変形体の生態的な動作を組み込んだ並列分散型の新しいアルゴリズムであるArtificial Plasmodium Algorithm (APA)を考案し、迷路探索を効率良く行なう手法を提案しました。APAは、粘菌変形体の原形質流動である収縮波に着目を得たアルゴリズムであり、各粘菌変形体であるセルが、栄養源(出発点と到達点)の情報と各粘菌変形体から見た栄養源の方角の2つの情報を持っています。これらの情報は、2つの栄養源を発信源とする収縮波が各粘菌変形体に伝搬すると共に更新され、迷路の通路上のいずれかの場所で収縮波は重なりあいます。
収縮波がすべての粘菌に伝搬した後、2つの収縮波が重なり合った地点を起点として、各の粘菌変形体が持つ栄養源への方向を辿っていくことで、迷路内での2地点をつなぐ経路が完成されます。APAの収縮波による情報の伝搬は、局所的な判断によって更新されたものが、全体を通した合理的な判断となるものであり、粘菌変形体の細胞内での情報伝達方法を模した非常に単純な探索方法です。コンピュータ上に再現した先行研究と同様の迷路を用いたシミュレーションでは、最短経路のみならず複数の経路を発見できることを確認しました。また生命体の粘菌変形体の迷路実験結果と比較しても、相関のある結果を得られました。
イスタンブール市内
今回の会議は、私にとって初めての国際会議ということもあり、期待と緊張を伴うものとなりました。口頭発表では様々な国の研究者の方に聴講いただき、自身の研究を知ってもらう楽しさを味わうことできたと共に、さらなる英語力の研磨が必要だということを痛感しました。また多くの研究者の発表や講演を拝聴することができ、自身の研究と関わることだけでなく、他分野の最先端の研究を知ることができました。それらを通して、研究のことだけではなく、発表の仕方やスライド構成、英語での質疑応答など自身の幅を大きく広げることができたと思います。また、世界中の同世代の学生も多数発表しており、大変大きな刺激を受けると同時に、これからの自身の研究に対する大きなモチベーションともなりました。
最後になりましたが、本会議に参加するにあたり、多大なるご支援をいただきました一般財団法人丸文財団に心より感謝し御礼を申し上げます。