モントリオールの旧市街
ICSI-9は、Si系半導体の結晶成長やデバイス作成に関する国際会議であり、2年おきに世界各地で開催されている。セッションは1つのみで規模としては電気化学会(ECS)や材料学会(MRS)などとは比べるまでもなく小さいが、世界中からSi系半導体関係のベテラン教授から学生まで多くの研究者が集まり、5日間にわたり密度の濃い議論を交わすことができる。
モントリオールの夜景
薄膜トランジスタのさらなる発展のため、発表者は以前より、現在のSiより良好な電気的特性を示す新材料であるGeSnの結晶化に関する研究を行ってきた。
今回は、GeSnの結晶化温度を低温化(200oC)し、フレキシブルなプラスチック基板上に薄膜トランジスタの形成が可能となる結晶成長技術を開発したので、本会議へと報告した。
本会議では “Low Temperature (‹200℃) position controlled Solid Phase Crystallization of GeSn combined with Laser Anneal Seeding” という題目で口頭発表を行った。
発表会場の様子
発表では、非晶質GeSn層にレーザーを照射して微小な結晶粒を形成した後、熱処理を施すことで、絶縁膜上の決められた位置に横方向固相成長を、フレキシブル基板上に応用可能な低温(‹200℃)で実現したこと、また、成長中のSn原子のボンド結合の挙動を詳細に評価したことなどを議論した。
また、質疑時間が短かったにも関わらず、成長後のGeSn層の結晶性や電気特性に関する質問やレーザー装置の詳細に関する質問など多数の質疑を受けた。特にIV族結晶成長の権威であるシュツットガルト大学のE.カスパー教授が内容に興味を示し、休み時間に至るまで議論できたことはとても大きな励みであり、今後の研究の発展のためのアイデアも多数得ることができた。
本会議では、日本国内の学会では会うことのできない、世界中の研究者と出会うことができ、普段は聞けない多くの興味深い講演を聞くことができた。自身の研究と密接に関わる最先端の情報はもちろん、他分野の最先端の研究を知ることで、自身の研究の幅を大きく広げることができた。また、以前読んだ論文の著者に実際に会うことができ、論文の内容を議論するなど、さまざまな研究者との交流をすることができた。その結果、海外のグループとの共同研究の可能性を得ることができるなど、非常に有意義な会議となった。
末筆ながら、今回の国際会議参加にあたり、貴財団から多大な支援をいただきましたこと心より感謝いたします。