国際交流助成受領者/国際会議参加レポート

平成27年度 国際交流助成受領者による国際会議参加レポート

受領・参加者名
増田 哲也
(日本大学 大学院生産工学研究科 数理情報工学専攻)
会議名
24th IEEE Asian Test Symposium
期日
2015年11月22日~25日
開催地
Indian Institute of Technology Mumbai, India

1. 国際会議の概要

基調講演

ATS2015 (Asian Test Symposium 2015) は、高信頼の回路設計、システム設計、フォールトトレラントコンピューティング、LSIテスト、フィールドテスト等に関して討議される国際会議である。ATSには、アジアだけでなく世界各地の多くの技術者、研究者が参加する。回路設計、テストの分野におけるアジア最大の国際会議といえる。1992年の創立から毎年アジア各地で開催され、今回は24回目であり、会場はインド、ムンバイが選ばれた。会議は11月22日から11月25日にわたり開催され、期間中は講演時に限らず、様々な場で専門家による活発な議論が行われた。次回は日本、広島で2016年11月21日から11月24日にわたって開催される。

2. 研究テーマと討論内容

口頭発表時の会場

私はコンピュータ/LSIの設計やテストを自動化するためのCADソフトウェアに関する研究をしている。本会議においては “A Test Generation Method for Data paths Using Easily Testable Functional Time Expansion Models and Controller Augmentation” という題目で口頭発表を行った。

近年、半導体集積技術の発達に伴い、設計される大規模集積回路 (Large Scale Integrated circuits:LSI) の高集積化が速に進展している。これによって、一般的なLSIテスト手法であるスキャンテストのテスト実行時間は急激に増加している。この問題を解決するために非スキャンテストに基づいたレジスタ転送レベル (Register Transfer Level:RTL) 回路に対する効率的なテスト手法が必要とされている。RTLデータパスにおける非スキャンテスト手法としてコントローラ拡大法がある。コントローラ拡大法はテスト時にデータパスのテスト容易な動作を可能とするように、コントローラにテスト用の機能を追加する。しかしながら、これまで提案されてきた順序回路のテスト生成アルゴリズムは回路構造のみからテスト系列を生成する。それゆえ、拡大したコントローラの機能通りにテスト生成するとは限らない。本会議では、データパスのテスト容易化のためのコントローラ拡大法と拡大したコントローラの機能通りにテスト生成するための手法を発表した。本手法ではデータパスのテスト容易な動作に着目し、その動作を実現するためにコントローラを拡大する。さらに、データパスのテスト容易な動作時における制御信号系列、状態信号系列の値をテスト生成時に制約として付加する。これにより、テスト生成の解空間が激的に削減される。また、制約値によってデータパスのテスト容易な動作を用いてテスト生成することが可能となるため、テスト生成が効率化される。実験では従来のテスト生成手法と比較し、本手法の有効性を示した。発表後は、テスト生成効率化の具体的な要因、コントローラ拡大にともなうセキュリティの問題点など活発な討論を行った。

3. 国際会議に出席した成果
(コミュニケーション・国際交流・感想)

昼食時の様子

今回のATS2015が、私が参加および発表をする初めての国際会議でした。英語能力が未熟な私は発表資料の作成、発音の練習など準備に苦労し、今の自分の実力で国際会議に参加することに不安を感じていました。しかし、今回の国際会議での経験は私にとって貴重で実りあるものであったと確信しています。私の発表に関する質疑応答の際、数件質問が挙がりました。その時、回答を即座に英語にすることができず、非常に悔しく恥ずかしい思いをしました。自分の専門分野に関する見識を深めるためには、その分野に関するあらゆる専門家とコミュニケーションがとれる必要があります。そのためには、英語で話す力、聞く力が重要だということが身をもって痛感できました。また、今回の国際会議では一流の専門家の発表や議論を聞くことができ、研究に対する大きな刺激となりました。私の研究に関しては、コントローラ拡大によるセキュリティ面の問題点など指摘をいただきました。この場で得た知識と経験は今後の研究活動に大いに役立てたいと思います。

最後に、本会議の参加にあたり、支援いただきました丸文財団に心より感謝申し上げます。

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