口頭発表会場のホテル
The International Chemical Congress of Pacific Basin Societies (PACIFICHEM) は、1984年に初めて開催され、5年に一度の開催で今回第7回目となる国際会議であります。環太平洋諸国を中心とした世界的な化学の祭典であり、今回の参加者数は15,414人と報告されております。環太平洋化学会に属する科学者および技術者の間で化学に関する情報の伝達交流を促進するため、これら科学者および技術者が一堂に会して、化学および工業化学の分野における最新の研究成果を発表討論する場として本国際会議は開催され、これら諸国の学術ならびに工業の発展と国民の福祉に資することを目的としております。
PACIFICHEMは毎回ハワイで開催される国際会議であり、ホノルル国際空港には国際会議の横断幕が掲げられ、国際会議における各会場をつなぐシャトルバスが運行されており、規模の大きさを感じるものでありました。
口頭発表の様子
本国際会議において、“Separation and recovery of Beryllium based on pH-sensitive polymer as functional separation media”という題目で口頭発表を行いました。本研究で用いているpH刺激応答性ポリマーはpH変化によりその形態が変化するポリマーで、医学・薬学の分野において注目されております。分離・回収の分野では積極的な開発が行われていないものの、金属捕集媒体として大きな可能性を有しております。今回研究のターゲットとしております電気・電子材料に幅広く用いられているベリリウムは、溶媒抽出を中心に分離・回収の検討がなされているものの、さらなる回収効率の向上が求められております。そこで本研究では、pH変化とろ過操作のみで、ベリリウムを回収率90~100%で分離できるシステムを発表しました。本ポリマーはリユースが可能であり、有機溶媒を使用しない全水系のシステムであるため、環境配慮型で安全性の高い材料であります。
質疑応答を含め40分の発表時間で、ベリリウムを含んだ金属イオンの分離挙動を中心とした質問を受け、分離・濃縮に関する分野で世界的に活躍されている研究者と意見交換を行うことができ、大変参考となり有意義な経験となりました。
口頭発表会場
国際会議における口頭発表をPACIFICHEMで初めて経験させていただきましたが、質疑応答をはじめとして英語で表現することの難しさを痛感し貴重な経験となりました。発表後に研究者の方々と意見交換やアドバイスをいただき、今後の研究を進めるにあたってどのようなアプローチをしていくべきか学ぶことができました。研究内容については、実サンプルにおけるマトリクスの把握、分離機能のさらなる解析等、通常より踏み込んだ意見をいただくことができました。また、自分の発表以外にいくつか聴講した講演において、どのように発表すべきかの姿勢に触れ、学ぶことができたことも今後の研究活動に活かすことができるものとなりました。今後も国際的に茨城県工業技術センターのアピールができるよう引き続き研究活動を行っていきたいと考えております。
最後に、本国際会議に参加するにあたり、多大なご支援をいただきました丸文財団のご配慮に深く感謝申し上げます。