今回参加したSymposium on Thermophysical Propertiesは、熱物性全般に関する世界3大会議のひとつであり、3年に1回開催されます。本会議は1959年にパデュー大学にてYeram S Touloukian教授によって設立されたThermophysical Properties Research Center (TPRC)を前身とする熱物性に関する国際会議です。
会議には、理論・実験・シミュレーションなど様々な手法を用いて研究された気体・液体・個体および生体システムの熱物性に関するセッションが数多く用意されています。
University of Colorado Boulder
2015年で19回目の開催となる今回の会議は、アメリカ合衆国コロラド州にあるコロラド大学にて開催され、21分野のセッションに加えポスターセッションが用意されました。今回の会議では口頭発表およびポスター発表のとして850件程度の発表がなされました。
近年注目されているナノ材料のひとつに自己組織化単分子膜が挙げられます。これは、単一分子からなる有機薄膜であり、表面の官能基によって、修飾した基板の表面に様々な特性を付与することが可能などといった特徴を有しています。そのため、これをナノスケールでパターニングすることによって様々な応用が期待されます。しかしながら従来の手法では、接触法による表面の汚染や回折限界による分解能の制限などといった問題が挙げられていました。そこで本研究では近接場光によるフォトサーマル効果を用いて非接触かつナノスケールにパターニングを行う手法の開発を目指します。今回の発表では、本手法を実現するための3つの試みについての発表を行いました。
Oral presentation
1つ目は試料構造の改良による試料表面の加熱効率の向上として、新しいナノ構造を有する試料を導入し、その有効性を実験的に確認しました。2つ目は加熱機構として新たに試料の両面から光を照射する熱アシスト機構について実験的な検討を行い、その有効性および実現可能性を示唆しました。3つ目として、近接場領域において更なる高分解能でのパターニングを実現するために、近接場構増強のための新しいアパチャー構造の導入について解析的に有効性を示しました。
以上の発表についてマイクロ・ナノ領域の熱輸送に関する専門家の方と質疑応答を通じて有意義な議論を交わすことができました。
参加した国際会議では、熱物性に関する研究者が各国より数多く参加しており、また開催されたセッションも様々であり、自分の専門とする分野はもちろん、熱物性に関する様々な分野に関しての発表がなされており、非常に興味深く参加することができました。
Banquet
特に自分の口頭発表時には、学会最終日にもかかわらず、類似の研究テーマを扱っている研究者の方々に発表を聞いてもらい、質疑の際に質問や意見をいただけたことはこの学会における大きな収穫であったと考えています。
また、学会中に開催されたバンケットでは、本会議に参加した研究者が一堂に会して食事を楽しみ、その中で同世代の博士課程の学生とコミュニケーションを取ることができました。
最後になりますが、本学会への参加にあたって貴財団より御支援を賜りましたことを心より感謝申し上げます。