学会会場前
CLEO (Conference on Lasers and Electro-Optics以下、本会議)は、レーザーやオプトエレクトロニクス分野をすべて網羅した世界最大級の国際会議で、基礎研究から産業応用まで様々な研究発表が行われている。本会議は毎年5~6月頃にアメリカ カルフォルニアのサンノゼで開催されており、大学関係者だけではなく、光学部品メーカーの技術者、セールス・マーケティングの関係者さらには政府関係者や軍事関係者まで幅広く参加している。そのため研究発表としての場だけではなく、光・レーザー関係の重要なビジネスの場としても機能している。
本会議のプログラムは主に、光・レーザー分野の著名人らによる招待講演や口頭発表、ポスター発表からなる。そのほか、多数の光学メーカーによる展示会や特別講演として光・レーザー分野の市場に着目した討論会なども開催された。また、展示会の一角には、学生向けのStudent Loungeがあり、ソフトドリンクやお菓子などを食べながら、各国の学生と交流を深めた。
本会議の次回開催は2016年6月5~10日に同じくアメリカのサンノゼで予定されており、ホームページを通して参加者の募集が行われることになっている。
太陽光を集めてレーザーを作る技術である「太陽光励起レーザー」が注目されている。太陽光は地上に大量に降り注いでいるが、その波長・位相・方向は無秩序でありエネルギー密度が低い。反対に、レーザー光はそれらが揃っているため、太陽光をレーザー光に変換することにより、高密度のエネルギー源として利用することができる。太陽光励起レーザーでは、耐熱性に優れ、太陽光スペクトルと吸収スペクトルのマッチングが良いなどの条件からNd3+/Cr3+:YAG (Yttrium Aluminum Garnet)セラミック媒質(Nd/Cr:YAGセラミック)が使用されている。
Cr3+は温度上昇に伴い、吸収係数が増加する。そのため室温と比較して高温でレーザー動作の高効率化が期待できる。そのため、本会議では、Nd/Cr:YAGセラミックの高効率化を目的に、小信号利得の温度依存性について報告を行った。
Nd/Cr:YAGセラミック(Nd:1.0%, Cr2.0%)の小信号利得の温度依存性を評価した結果、温度上昇に伴い増加し400Kで最大となることを明らかにした。Nd/Cr:YAGセラミックは高効率レーザー動作が期待できるだけでなく、高温で効率が向上できる。
ポスター発表会場にて
ポスター発表の際には、他の会議に比べてかつてないほど、多くの海外研究者の方々に発表を聴きに来ていただけた。その方々から、Nd/Cr:YAGセラミックの優位性や基本的な特性に関連した質問を多数受けた。Nd/Cr:YAGセラミックは日本を中心に開発が進められている新レーザー媒質であるため、海外ではまだ認知度が低いと感じた。今後、Nd/Cr:YAGセラミックの研究をさらに世界に広げていきたい。
本会議は私にとって3度目の日本国外での国際会議であった。国際会議に参加するたびに研究内容や英会話力が向上しているように思う。英会話力が向上したことにより、海外の研究者の方々と対等に議論できた。
国際会議の経験は、私にとって研究の視野を広げるだけではなく、大きな自信になった。今後も国際会議に積極的に参加し、研究や英会話力だけでなく、人生の経験をさらに積み重ねていきたい。
最後に、今回の国際学会に参加するためのご支援をいただいた一般財団法人丸文財団に心より感謝いたします。