ユトレヒト大学ホール
Biofabricationとは、動物細胞を用いて、細胞組織のパーツや臓器を作製する技術のことを指し、近年大きな注目を集めている。Biofabricationは、医学や生物学、そして工学を融合した新しい学術分野であり、創薬や再生医療への応用が期待されている。組織や臓器を作製するための方法には、細胞そのものや、ゼラチンなどのハイドロゲルを細胞足場として用いる方法が提案されている。また近年では、産業界で注目されている3Dプリンター技術を応用し、細胞の懸濁液をインクとして用いることで、立体的な細胞組織・臓器の作製が試みられている。このような背景から、Biofabricataion会議に参加する研究者の数も年々増加しており、本会議においても世界各国から著名な研究者が会議に参加し、朝9時から20時頃まで、3日間にわたり活発な議論が行われた。さらに会議終了後には、welcome party、ポスドク・学生を対象にした懇親会、参加者全員を対象とした交流会が、会議終了後に開催され、様々な研究者と交流する場が多数設けられていた。
会議の様子
生体外で組織や臓器を作製するためには、使用する細胞源の確保や選別が必要となる。特にヒトiPS細胞などの多分化能を有する細胞を用いる場合には、使用する細胞の選択は再生医療を実現するうえで重要な要素技術となる。そこで、我々は、電気化学を用いて細胞を非侵襲的に分離し、回収可能な基板を開発した。具体的には、金表面上にオリゴペプチド分子を修飾し、さらに特異的な細胞認識能を有する核酸であるアプタマーを配置することによって、細胞集団の中から特定の細胞を表面に接着することができた。さらに選択的に接着させた細胞は、-1.0 Vの電位を5分間印加するのみで、ほぼ全ての細胞を分子層とともに脱離させることが可能であった。脱離させた細胞は、良好な生存状態を示し、細胞の増殖にも影響がないことがわかった。つまり、本研究では、選択的に細胞を接着させ、その細胞を非侵襲的に回収できる技術を開発し、今後ヒトiPS細胞などを用いたBiofabricaitonを加速するツールになると期待できる。
Poster Award受賞
3日間の会議の間、ポスター発表の機会が3度もあり、多くの研究者の方々に研究内容を発表するとともに、深い議論をすることができた。英語で発表することは容易ではないが、英語を話す恐怖心はなくなったように思う。また、英語が聞き取れない場合でも、わかるまで質問することが大切であると感じるようになった。
会議で開催された懇親会には2回参加し、様々な研究者と交流することができた。日頃は論文誌で名前を見る著名な先生とも話をする機会もあり、研究についてのディスカッションをすることができた。また、日本で開催される国内会議では、なかなか話す機会がない先生方とも議論することができ、大変有意義な時間を過ごすことができた。さらに、幸いな事にISBF POSTER AWARDを受賞することができ、とても貴重な経験をすることができた。